「小・中学校の家庭学習アイデアブック」から学ぶ家庭教育②~子どもに宿題を自発的にやらせる方法

変化が大きいこれからの社会では,単に与えられた課題がこなせたり,勉強ができたりするだけでは,食べていくことができません。したがって子供が多くの時間を過ごす家庭で,思考力や主体性を高める教育を実施していくことが大切です。効果的な家庭教育・学習について,『アクティブ・ラーニングが絶対成功する!小・中学校の家庭教育アイデアブック』をもとに考察を深めます。

今回は「子どもに宿題を自発的にやらせる方法」について考えます。

アクティブ・ラーニングが絶対成功する! 小・中学校の家庭学習アイデアブック

アクティブ・ラーニングが絶対成功する! 小・中学校の家庭学習アイデアブック

 

宿題をやることの重要性

なぜ宿題をやることが大切なのでしょうか。学校から出された宿題をやること以上に,子ども自身で計画を立て,主体的に学習することに価値があります。将来社会に出てから必要なのは,自分自身で考えて行動し,目標を達成できる力だからです。

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親が口うるさく言って宿題をやらせるのではなく,子どもが自発的に取り組むよう導きましょう。

自発的に宿題をやらせる方法

では,どうすれば子ども自身で宿題に取り組むようになるのでしょうか。

1.目標を子ども自身で決めさせる

「親に言われる前に宿題をやる」「夕食の前に宿題を終わらせる」「17時になったら宿題を始める」など,月間目標を子どもに決めてもらいましょう。子ども自身で「こうする!」と約束させることが大切です。紙に書いて貼っておくと,子ども自身で意識できるようになるので,親が口うるさく言う回数も減るでしょう。

夏休みの宿題など,量が多く長期間にわたるものは,学習日や1日あたりの学習量について,予め計画を立てておいてください。

2.家庭学習の記録を付けておく

子どもが決めた目標について,日々きちんと取り組めているかどうか,記録を付けましょう。〇,△,×をカレンダーに記入したり,シールを貼ったり,達成度が目に見える形になれば,どのような方法でも構いません。頑張りを目に見える形にすることで,子どもの努力をさらに引き出すことができます。

『アクティブ・ラーニングが絶対成功する!小・中学校の家庭教育アイデアブック』に実際のシート例が掲載されていますので,ぜひ参考にしてみてください。

3.取り組みの振り返りを行う

記録をもとに,「きちんとできているかな?」「もうちょっと頑張った方がいいかな?」と振り返りを実施しましょう。子どもだけに任せるのではなく,親も参加して一緒に話し合うようにしましょう。甘い部分があれば,「この日はできていなかったんじゃないの?」と指摘したり,きちんとできている日が続いていれば,「頑張っているね!」とほめたり,適切なフィードバックをすることが大切です。

「自分を見ていてくれる人がいるんだ」「頑張りを認めてもらえるんだ」という安心感が,毎日コツコツ粘り強く取り組む姿勢を養います。

4.継続して実践する

『アクティブ・ラーニングが絶対成功する!小・中学校の家庭教育アイデアブック』では,このような取り組みを2年間継続して実践するよう書かれています。中学に入ってからの引継ぎについても記述されており,それほど継続的な取り組みが大切なのでしょう。

「子どもが自分から勉強しない」というお悩みは,私のもとにもよく持ち込まれますが,「半年で何とかしたいんです」「1年で完全に自力で勉強できるようになってほしいんです」といった要望を持っている保護者の方が少なくありません。

勉強嫌いの子が自発的に学習に取り組めるようになるためには,ある程度の時間が必要です。取り組みを開始する年齢も大きな鍵となります。年齢が上がるにつれて,学習習慣を付けることが難しくなりますので,ぜひ小学校低学年のうちから,子ども自身で目標や計画を立て学習させるようにしましょう。

そして,学習習慣がなかなか定着しない最初のうちは,親のサポートが必要不可欠です。勉強を子ども任せにしてしまったり,「やりなさい!」と口うるさく言ったりするのではなく,「今日はきちんとできたかな?」「最近頑張っているね!」と毎日子どもと話し合う時間を取りましょう。親も根気よく子どもと向き合うことが大切です。

 

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子どもの「やり抜く力」を高める方法⑧~成果の出る練習をする

成果が出る練習の仕方とは

長時間一つのことに取り組んでいても,なかなかうまくいかない人がいます。一方で,物事に粘り強く取り組み,挫折や困難を乗り越え,成果を出し続けられる「やり抜く力」の高い人もいます。

毎日ピアノを練習していても,なかなか上達しない子もいれば,3日に1回しか練習しないのに,難しい曲を弾けるようになる子もいます。毎日勉強ばかりしていても,中程度の成績しか取れない子もいれば,部活や習い事をしたり,友達と遊んだり,好きなことをしながら,抜群の成績を取る子もいます。両者の違いはどこにあるのでしょうか。

認知心理学者のアンダース・エリクソン氏によると,エキスパートたちの練習の仕方は、他とは一線を画するそうです。成果を出す人たちは,具体的に次のような方法で練習を行います。

(1) ストレッチ目標の設定

得意なところを伸ばすのではなく,弱点の克服に努めます。

(2) 集中し目標達成を目指す

「できること」「まだできないこと」を明確に把握します。

(3) 繰り返し練習する

「できないこと」がすんなりできるようになるまで練習を重ねます。

(4)新たなストレッチ目標の設定

(2)→(3)→(4)を繰り返します。

エリクソン氏は,これを「意図的な練習」とよんでいます。

 

逆になかなか成果を出せない子どもは,次のような方法で,学習や練習をしていることが多いです。

(1) 目標がない

どうなりたいから,その課題に取り組むのか,考えられていません。

(2) 集中していない

時間が過ぎるのをただ待っている,その課題さえこなせばよいと思っています。「できること」「できないこと」を明確に区別せず,何となく練習や学習に取り組んでいます。

(3) 弱点から目を背ける

「できないこと」を避け,「できること」ばかり取り組もうとします。 

このようなやり方では,いくら長時間取り組んでも成果が出ないので,注意が必要です。 ぜひ親が「新しくできるようになったことは何かな?」「まだできないことはあるかな?」「これから何に気を付ければいいかな?」と声かけして,子どもに「意図的な練習」をさせましょう。

勉強やスポーツ,音楽など,何でも高水準でできる子がいますが,そのような子どもは,長時間勉強や練習をしているわけではなく,友達と遊んだり,自分の趣味を極めたりと,積極的に様々な物事に取り組んでいます。小さなころから「意図的な練習」が自然とできているため,短時間で何でもコツを掴み,成果を出せるのでしょう。難関大学に通いながら,実はピアノやバイオリンの腕前が一流だったり,部活動で表彰されていたりと,いわゆる「がり勉」ではない子どもたちが案外多いものです。私の友人の東大生にも,このようなタイプが少なくありません。幼少期から,勉強でも運動でも,「意図的な練習」ができるように,親や先生が導いていたのでしょう。 

効率よく成果が出せるかどうかは,練習や学習の仕方にかかっています。「意図的な練習」ができるようになれば,速いスピードで次々と目標を達成していくことができます。ぜひご家庭で子どもに声かけして,「意図的な練習」を取り入れてみてください。

子どもの「やり抜く力」を高める方法⑦~本当に好きなことを見つける

「やり抜く力」を高めるために,子どもが本当に好きなことを見つけましょう。好きなことだからこそ,「もっと上達したい」「壁を乗り越えたい」と努力し続けることができます。反対に,本当に好きなことでなければ,「できなくてもいいか」「いつ辞めてもいいや」となかなか真剣に取り組むことができません。

なるべく子どもが小さいうちに,本当に好きなことを見つけましょう。学年が上がると、学習が本格化し,学校生活も忙しくなるので,年齢が小さいうちに様々な体験をさせ,何が好きかを見極めることが重要です。

その際,「親がやらせたいこと」に取り組ませるのではなく,「子どもの好きなこと」を引き出すように注意してください。先ほど説明した通り,自分が本当に好きなことでなければ,「やり抜く力」を高めるのが難しいためです。本当に好きなことかどうかは,子どもの表情や目の輝き,集中力で,判別できるはずです。

そして,子どもが興味を持ったことを「こんなくだらないもの……」と否定しないよう気を付けましょう。一見くだらないように思えることが,実は別の分野に繋がっていたり,そこから興味が派生したりというケースは多いものです。

たとえばAくんは3歳のころ,床屋のサインポール(赤,青,白のくるくる回るライト)が大好きでした。サインポールを見ると,必ず立ち止まり、30分以上その場に座り続けます。それを見たAくんのお母さんは「この子は電気が好きなんだ!」と思い,理科の実験キットを買い与えました。Aくんは夢中になって,電池をつないだり,電球が光るのを観察したりしました。その後も,Aくんは様々な実験キットを通じて,自身の興味を深めました。年齢が上がるとAくんは,道路を走っている車,新幹線や電車を観察して,構造を分析し始めました。

Aくんのお母さんは,Aくんが興味を持ったことに,とことん付き合いました。図鑑を一緒に調べたり,イベントに足を運んだり,Aくんが好きなことを深められるよう,徹底的にサポートしました。

Aくんは現在,私のロボット教室に通っていますが,群を抜いてロボットの組み立てが上手です。物体の構造に関する理解も深く,自力で考えて,写真のロボットをブロックで再現することができます。集中力,やり抜く力ともに非常に高いです。Aくんは,困難にぶつかっても,決してあきらめません。「将来エンジニアになりたいから頑張る」とAくんはいつも話します。

Aくんが3歳のときに,お母さんが「サインポールばかり見て。くだらない!」「早く行くわよ!」と,ぞんざいに扱っていれば,現在のAくんはなかったでしょう。

親が子どもの興味を観察し,本当に好きなことを見つける取り組みを実施することが,「やり抜く力」を高める上で非常に重要です。

【キッズまちなか探検隊2017】<プログラミング体験> たくさんのご参加ありがとうございました

2017年8月8日(火),9日(水)に浜松こども館にて,【キッズまちなか探検隊2017】<プログラミング体験>PCでゲームを作ってみよう を開催しました。

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400名を超える応募者の中から抽選で選ばれた,約20名のお子様が参加されました。

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皆さん,プログラミングに取り組むのは初めてにもかかわらず,すぐにコツを掴み,50分でゲームを1つ作ることができました。

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教材通りにプログラムするだけでなく,音を追加したり,キャラクターを変更したり,敵の動きやビームの出る速さを変えたり,ご自身なりにアレンジされる生徒さんもいらっしゃいました。

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「とっても楽しかったから家に帰ったら続きをやりたい!」「もっとたくさんゲームやアニメを作ってみたい!」など,嬉しいお声をたくさんいただきました。

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50分という短い時間でしたが,少しでもプログラミングの楽しさを味わってもらえたのであれば,とても嬉しく思います。夏休みでお忙しいところ,保護者様同伴でご参加くださり,どうもありがとうございました。

今回落選となりご参加いただけなかった皆さん,申し訳ございませんでした。今後も一人でも多くの方々に,気軽に楽しんでいただけるようなイベントを開催していきたいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【東大レゴ部】ワークショップを開催しました 2017.08.05

2017年8月5日(土)に東大レゴ部の部長さんを講師にお招きし,ワークショップを開催しました。

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2つのモーターを使用して,曲がったり,旋回したりできるロボットを作りました。

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参加者の皆さんには,組み立て手順なしで,自力で構造を考え,ロボットを組み立ててもらいました。

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モーターの付け方や,ギアの噛ませ方,ロボット全体の構造について,皆さんの創意工夫が見られ,私にとっても新しい発見がたくさんありました。

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ロボットが完成した後は,プログラミングして,実際に走らせてみます。

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障害物の回りを回ったり,8の字に走らせたり,ゴールにアタックしたりして,皆さんがそれぞれ思いのままにロボットを操作して楽しみました。

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上手くいかない部分があっても落ち着いて考え,最後まで諦めずに粘り強く取り組む姿勢が,素晴らしかったです。

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 ご参加いただいた皆さん,わざわざ浜松までお越しくださり,大変魅力的なコンテンツを提供くださった東大レゴ部の金子さん,本当にどうもありがとうございました。

子どもの「やり抜く力」を高める方法⑥~失敗を責めない

失敗から学び,次に生かす経験は,「やり抜く力」を高める糧となります。しかし,同じ失敗を繰り返してしまう子どもや,失敗を嫌がる子どももいます。失敗をバネに成長できる子とできない子は,何が違うのでしょうか。
 
子どもが同じ失敗を繰り返してしまう,失敗を嫌がる原因の一つとして,親の叱責が挙げられます。子どもが上手く物事をできなかったときに,「なんでできないの!」「恥ずかしい」「周りの子はみんなできているのに」と責めると,子どもは失敗を隠したり,嫌がったりするようになります。
 
具体的な事例をご紹介しましょう。小学二年生のAくんは,失敗を認めようとしません。幼少期からできないことがあると,Aくんは親に怒られてきました。「なんでこのドリルが解けないの!」「またできなかったの!」「みんなもっと難しいことやっているのに……」と言われ,「できないことは悪いことだ」「失敗すると怒られる」と考えるようになりました。
 
Aくんは分からないことやできないことがあっても,質問することができません。できない自分や失敗する自分を認めたくないのです。悪いテスト結果や,難しそうな宿題はすべて隠します。そして習い事でも勉強でも,少しでも「難しい」「失敗しそうだ」と感じると,「もうやりたくない」と言います。
 
Aくんは現実から目を背けるため,「どこが良くなかったか」「どうすれば上手くいきそうか」と考えることができません。このままでは挫折や困難を乗り越え,物事をやり抜くことはできないでしょう。
 
親が失敗を責めると,子どもは失敗することを嫌がり,避けるようになります。その結果,失敗から学んだり,もう一段高い目標にチャレンジしたりすることができなくなります。
 
好きで失敗する子どもはいません。子どもたちは皆,懸命に取り組んでいて,それでも失敗してしまうのです。したがって,子どもが失敗したときは,感情的に責めないようにしましょう。失敗から学び次に生かせるよう,「なぜ今回は上手くいかなかったかな?」「次からはどうすればいいかな?」と子どもに考えさせる声掛けを実施しましょう。
 
 
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子どもの「やり抜く力」を高める方法⑤~良くなった点、努力した点を褒める

以前より良くなった点,努力した点について褒めることは,子どもの「やり抜く力」を高める上でとても有効です。「自分の頑張りを見ていてくれる人がいるんだ」と子どもは安心感を抱き,「もっと頑張ろう」と前向きに物事に取り組むことができるためです。

子どもを褒める際,注意してほしいことが3つあります。

(1)他の子どもと比較しない

周囲と比較するのではなく,以前の子ども自身より成長していたら,褒めるようにしましょう。「〇〇くんはここまでできるのに……」と周囲と比べて子どもを評価すると,「自分は頑張っているのに」「頑張っても誰も見てくれないんだ」と努力しようとする気持ちが失われてしまいます

子どもが頑張っていても,成果がすぐに表れないこともあります。子どもが努力しているのであれば,「最近頑張っているね」「前よりここが良くなったね」ときちんと評価して、「このまま続ければ結果が出ると思うよ」と励ましの声掛けを実施するようにしましょう。

(2)努力を誉める

「頭がいいのね」と才能を褒めるのではなく,「よく頑張ったね」と努力を褒めるようにしましょう。

コロンビア大学のミューラー教授らの実験結果によると,「子どものもともとの能力(=頭の良さ)を褒めると,子どもたちは意欲を失い,成績が低下する」ということです(中室牧子『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

能力を褒めると,何かできないことがあったとき,「才能がないからだ」「頭が悪いからだ」と,その原因を能力に求めてしまいます。能力を褒められた子どもは,「才能がないと思われたくない」「頭が悪いと思われたくない」と考え,できる課題にしか挑戦しなくなります。失敗や困難を乗り越え,物事をやり抜くことが難しい性格になってしまうのです。

一方で,努力を褒められた子どもは,何かできないことがあったとき,「自分の努力がまだ足りないからだ」と考え,より努力します。努力を褒められた子どもは,何回テストを重ねてその結果が悪くとも,粘り強く問題を解こうと努力を続けたというデータがあります(中室牧子『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン)。努力を褒めると,さらなる努力を引き出すことができるのです。

(3)良くなった部分を具体的に褒める

子どもを褒めるときは,良くなった部分を具体的に褒めるようにしましょう。

子どもに自信を付けさせたいからと言って,むやみやたらに褒めないよう気を付けてください。何でも褒めると,「自分は何でもできるんだ」「悪いところはないんだ」と勘違いしてしまい,現実を直視できなくなります。現状や結果を冷静に分析して,次に生かしていくことができないので,物事をやり抜くことが難しくなります。

「前よりここの部分が良くなったよね」「一時間集中して勉強できたね」と,明確な根拠を示し,具体的に褒めましょう。成果がなかなか出なくても,姿勢やプロセスを評価していることを伝えると,子どもは「見てくれている人がいるんだ」と安心して,さらに努力することができます。

子どもの努力する姿勢を引き出すことで,「やり抜く力」を高めましょう。

 

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