著書発売とオンラインサロン開設のお知らせ

いつもご覧いただきありがとうございます。著書『お母さんの「怒りの言葉」は子どもの「やる気を引き出す言葉」に変えられる!』(多田淑恵 著/PHP研究所 1,296円)が発売されましたので,お知らせいたします。

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www.php.co.jp

いつも支えてくださる皆さまのおかげです。心より感謝申し上げます。本書では具体的な事例を用いながら,お子様への声かけのヒントをたくさん盛り込みました。上記リンクに見本ページも掲載されておりますので,ぜひご覧いただけますと幸いです。

 

またこの度,保護者様向けオンラインサロンをオープンいたします。〇×クイズに答えながら,お子様への効果的な声かけや接し方についてオンラインで学ぶ講座です。

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皆様のご参加をお待ちしております。

『Learn Better』から学ぶ効果的な学習法⑫~目標を高く設定しすぎない

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(アーリック・ボーザー著/英治出版)をもとに,効果的な学習法について探ります。

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

 

「目標は高い方がよい」というわけではない

子ども自身で目標を持ち,達成に向けて努力することは大切です。「目標は高い方がいいから……」「もしこの目標が達成できなくても,その少し下を狙えるかなと思って」と言う子どもや保護者の方がいます。果たして目標は高い方がよいのでしょうか。

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』では,あまりに高望みした学習目標は逆効果であると述べられています。

学習目標は大晦日に立てる「タンゴをマスターする」といった来年の抱負のようであってはいけない。[……]「タンゴをマスターする」ではなく、週一回のタンゴのレッスンに参加するとか、水曜の夜と日曜の午後は家で練習する、といった小さな目標を細かく設定すべきだ。

手の届く目標を掲げ,モチベーションを維持する

高すぎる目標や漠然とした目標では,子どものやる気を引き出すことは難しいでしょう。例えば「○○中学校(実力から大きく離れた学校)に合格する」という目標を掲げても,何から手を付けたらよいか分からず,「やっぱり無理なんだ……」と後ろ向きになってしまうかもしれません。「数学をがんばる」というような漠然とした目標を掲げた場合,「がんばったか・がんばっていないか」の基準が曖昧なので,達成感を得にくいでしょう。

これに対して,頑張れば手の届く具体的な目標を掲げると,モチベーションを維持しやすくなります。モチベーションの維持は,学習に継続的に取り組み,成果を出す上で非常に大切です。

[……]気持ちのモチベーションを維持する必要もある。これに関しては、自分への語りかけが重要だ。その際、黒か白かの両極端な思考は避けなければならない。だから「私は全然だめだ」と自分に語りかけるのではなく、「私は悪戦苦闘しているのだ」と語りかけよう。また、少しでも前進したら見逃さず、どんな小さな成果でも「今日は三時間やった」などと自分を褒めよう。

小さな成功体験を積み重ねることが大切

「休みの日は1時間勉強する」「ドリルを2ページずつ進める」など,頑張れば達成できる目標を掲げましょう。「今日も目標をクリアできた!」と成功体験を積み重ねることで,自己効力感が高まり,学習に前向きに取り組めるようになります。「目標を下げても大丈夫なように……」と最初から高い目標を設定したり,「英語の勉強をもっとがんばる」というような曖昧な目標を掲げたりするのではなく,努力すれば着実に達成できる目標を設定することが,子どものやる気を引き出すコツです。

 

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『Learn Better』から学ぶ効果的な学習法⑪~自己効力感を高める

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(アーリック・ボーザー著/英治出版)をもとに,効果的な学習法について探ります。

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

 

学習における情動の重要性

どのような感情で学習に取り組むかは,とても大切です。「どうせ私にはできない」「またきっとミスをしてしまう」「間違えたら叱られる……」ーー。このような気持ちで学習に取り組んでも,知識やスキルが身に付きにくいでしょう。

学習と感情の関連性について,『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』では次のように述べられています。

[……]強い感情によって学習が妨げられる場合もあるし、情緒が不安定だとスキルが身につかない。ストレスを感じていると思考が落ち着かない。情動によって学習の成果が落ちてしまう場合があることを示す研究は多数ある。

では,どのような感情の状態を目指すのが良いのでしょうか。そのためには何をすればいいのでしょうか。

自己効力感を高めることが大切

学習で成果を出すためには,「このタスクならやり遂げられる」「これからやろうとしていることで良い成果を達成できる」という自己効力感を持つことが大切です。

あるタスクをやりとげられると信じていれば、努力を注ぎやすい。自己効力感が大きいほど、目標を達成し、結果に満足する確率も高まる。自己効力感が集中力に火をつける点も重要だ。目標にいっそう意識を絞り込み、気を散らすものにもうまく対処できるようになる。

自己効力感を養う上で,イメージトレーニングが効果的です。本書では,スポーツ選手がイメージトレーニングを行うことで自信を付け,大会でも良い結果を残せるようになったという例が挙げられています。

イメージトレーニングのおかげで、テイラーは自己効力感を獲得した。これは自分の能力への信頼感、きっとうまくいくという気持ちであり、学習に際しての情動の気まぐれに対処するうえで非常に重要だ。つまり、感情を管理する手段となる。

私自身の幼いころを振り返ると,定期テストや入試,検定試験,習い事の発表会などについて,やはり日常的にイメージトレーニングを行っていました。日々の学習や練習のモチベーションを保つことができ,本番でも脳内のシュミレーションを実行に移すだけでよいので,緊張がほぐれ,実力を出し切ることができました。

教室に通ってくれている生徒さんにも,次のようなことをおすすめしています。

  • 志望校に行ってみて(難しい場合はインターネットで写真や授業内容などを調べて),実際にそこで学んでいる将来の自分を想像してみる
  • テスト本番で落ち着いてすらすら問題を解いている自分を想像してみる
  • 半年後,1年後に苦手分野を克服している自分を想像してみる

このような声かけをすると,皆さん,目をキラキラさせて想像を膨らましてくれます。「うわ~楽しそう!」「できそう!」「もっと頑張れそう!」と学習に取り組む姿勢も変わります。

なるべく具体的にイメージして,「きっとできる!」と信じることが大事です。いくら現状が厳しくても,「このままじゃ試験に落ちるわよ」「そんな学校,受かるわけないじゃない」と可能性を否定するのではなく,「この学校に行けたらおもしろそうだね~」「こんな授業もあるんだって!」「入試にはこんな問題が出るらしいよ」と子どもが具体的にイメージできるように導きましょう。きっと前向きに努力する姿勢を引き出せるはずです。

 

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『Learn Better』から学ぶ効果的な学習法⑩~地頭の良さよりもメタ認知が大切

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(アーリック・ボーザー著/英治出版)をもとに,効果的な学習法について探ります。

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

 

学習においてメタ認知が大切

同じ量や時間の学習をしていても,成績が上がる子どもとそうでない子どもがいます。その違いは何でしょうか?地頭の良し悪しでしょうか?

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』では,学習において重要なのは,地頭の良さではなくメタ認知であると述べられています。

メタ認知とは思考についての思考のことで、広い意味では自分が物事をどう理解するかを理解することを指す。頭の中に別の視点を作り、思考している自分を自覚することである。

具体的にメタ認知とは,次のような取り組み・考え方のことです。

  • 問題をどのような視点からとらえるかをじっくり考える
  • 自分の答えに筋が通っているかどうかに感覚を研ぎすませる
  • どうやって答えにたどりついたかを内省する

研究者のマーセル・ヴィーマンによると,メタ認知ができる学生の方が,IQの高い学生より試験の成績が上回る場合があるとのことです。

一つ一つの課題にじっくり向き合うことが大切

学習量や時間を増やせば成績が上がると考え,早く答えを知りたがる生徒さんや,それを良しとする保護者の方が少なくありませんが,それでは学習の成果が表れにくいです。答えを一度聞いて分かったつもりになっても,いざ自分で問題を解こうとすると難しいのは,理解しきれていないからです。一つ一つの問題について,理解しきれるまでじっくり向き合わなければ,その問題から得られることが少なく,結果として学習効率が下がってしまいます。

学習にまつわる最大の問題の一つが、メタ認知の不十分さだ。私たちは知らないことを理解するために最善を尽くしていない。そして知っていることについては過信している。だから問題は、学んだ先から忘れていくことではない。熟考について熟考しないことだ。理解するためにもう一歩踏み込んでいないのだ。

「どうしてこの答えになるのかな?」「どうやったらこの解き方が分かるんだろう?」「本当に理解できたかな?もう一度何も見ずに解いてみよう」など,自分自身に問いかけながら,学習を進めることで成果が出やすくなるでしょう。

 

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『Learn Better』から学ぶ効果的な学習法⑨~勉強しているのに成績が上がらない原因と対処法

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(アーリック・ボーザー著/英治出版)をもとに,効果的な学習法について探ります。

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

 

勉強しているのに成績が上がらないのはなぜ?

「長時間勉強しているのに成績が良くなりません」「本人もやる気があり,たくさん勉強しているのですが……」という相談をよく受けます。このような場合,問題をこなすことで分かったつもりになっている,すでに分かっている部分・まだ分からない部分を明確にできていないことが多いです。

  • 量をこなせばいいと思っている
  • 宿題をやりさえすれば大丈夫だと思っている
  • 答え合わせがいい加減になっている
  • 同じ間違いを繰り返している

このような考え方・取り組み方では,長時間学習しても内容が身に付かず,成績が上がらないままです。

小テストで理解度を確認する

子どもが分かったつもりになっている,宿題をやることで満足してしまっているときは,ぜひ小テストを実施して理解度を確認しましょう。『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』では,小テストの利点について次のように書かれています。

[……]テストの利点は、明確化・フィードバック・判定だ。つまり、テストによって自分のわからないところが具体的に理解できる。この手法の威力は大きい。例えば会計学の試験に落ちたら、会計学をもっと勉強しなければならないとわかる。

「宿題やってきたからできるよ!」と自信満々な子どもも,小テストを実施してみると,「あれ?意外と点数が取れなかったな」「どうやって解くんだったかな~?まだまだ復習が必要だな」と気づくことが多いです。小テストを実施することで,このように子どもに気づくきっかけを与えることができます。本書によると,実はスキルや知識の習得が上手な人は,頭の中で頻繁に自身でテストを行っているそうです。

家庭教育でも小テストを実施したり,「今日勉強したことを教えて?」「この問題の解き方はどうだったかな?」と声かけして理解度確認を行うことで,スキルや知識を効率的に習得できるようになるでしょう。

 

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『Learn Better』から学ぶ効果的な学習法⑧~個人指導が効果的な理由

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(アーリック・ボーザー著/英治出版)をもとに,効果的な学習法について探ります。

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

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なぜ個人指導が効果的なのか?

本書では,知識を習得する上で個人指導が効果的であると述べられています。それはなぜでしょうか。

① 生徒の動機づけがしやすいから

学習の成果を出すにあたって,「なぜ勉強をするのか」「その教科は自分にとってどんな役に立つのか」「どのように生活と関連しているのか」など,生徒の動機づけを行うことが非常に大切です。個人指導の場合,先生が生徒とコミュニケーションを取る中で,生徒の考えを上手く引き出し,学習に対する動機付けを行いやすくなります。

また個人指導の場合,先生と生徒の間に個人的なつながりの感覚が生まれやすく,そのような側面からも生徒のがんばりを後押しすることができます。

② 生徒の知識レベルに応じて,指導の的を絞りやすいから

個人指導はその内容を生徒の知識レベルに合わせられるため,非常に的が絞られます。

[……]例えば一対一授業で生徒が分数について勘違いしていたら、先生は授業を止めて説明するだろう。[……]個人指導に効果があるのは、生徒がわかっていることを土台にするからだ。先生は私たちがすでに理解していることに合わせて情報をくれる。

学習が上手くいかずに行き詰っている生徒の場合,個人指導はもちろん効果的です。一方で学習が上手くいっている生徒についても,すでに理解している部分は飛ばして内容を先に進めたり,より良い学習法について話し合ったりできるので,個人指導であれば短時間で成果を出しやすいでしょう。私の教室でもこのような理由から,生徒さん一人一人の理解度に応じて,授業内容や進め方を調整する指導方式をとっています。

ご家庭でも,なぜ勉強するのかについて話し合ったり,分からないところはないか・どこから分からないかについて子どもに質問してみたりすることで,①②を補えるかもしれません。学習の成果を出すために,ぜひ子ども一人一人に合った教育を心がけましょう。

 

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『Learn Better』から学ぶ効果的な学習法⑦~計画を立てて学習することの重要性

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(アーリック・ボーザー著/英治出版)をもとに,効果的な学習法について探ります。

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

 

計画を立てることの重要性

私のところには,学習でつまずいている生徒さんが多く相談に来ますが,次のようなやり方で学習をしていることが多いです。

  • 学習目標を持っていない
  • やり方を考えずに手当たり次第に学習する
  • 塾の授業を聞いてお終いになっている
  • どの教科も苦手なのに全て満遍なく学習する
  • 計画を立てずにそのときに思いついた内容を学習する

本書では,学習の効果を出すためには,目標を持ち,計画を立てて学習することが重要だと述べられています。

[……]私が言いたいのは、何も考えずに学習してはいけないということである。[……]学習の入り口の段階では、プロセスをしっかり管理する必要がある。学習とは要するに一種の知識の管理である面が強い。すなわち目標設定、計画策定、前提となるスキルの習得、習得したい専門知識の絞り込みを行うということだ。

なぜ学習内容の絞り込みや計画が必要か?

ジョン・スウェラーをはじめとする研究者らは,学習が行われる場所は短期記憶であることが多いと証明してきました。知識を習得するためには,知識やスキルをできる大きさに分割し,一つひとつの習得に集中して,長期記憶にしっかり保存されるようにする必要があると本書では述べられています。

先ほど述べた以下のような学習法では,短期記憶から長期記憶に変えることができず,学習の効果が表れにくいでしょう。

  • 学習目標を持っていない
  • やり方を考えずに手当たり次第に学習する
  • 塾の授業を聞いてお終いになっている
  • どの教科も苦手なのに全て満遍なく学習する
  • 計画を立てずにそのときに思いついた内容を学習する

学習の効果を出すために,次のようなことに気を付けてみましょう。

  • 学習目標を持つ
  • 知識やスキルを定着させる仕組みを考える (例)単語帳を活用する,間違えた問題を解き直す,ノートにポイントをまとめる
  • 塾の授業内容を自宅でも復習する
  • 必要に応じて取り組む教科を絞り込む (例)まずは数学だけ取り組む→慣れてきたら英語も増やすなど
  • 学習目標から逆算して日々の計画を立てる

短期記憶から効率的に長期記憶に変えることができれば,その分学習時間も短くて済みます。ぜひ試してみてください。

 

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『Learn Better』から学ぶ効果的な学習法⑥~良い指導者・教師とは?

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(アーリック・ボーザー著/英治出版)をもとに,効果的な学習法について探ります。

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

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教育の成果を出すために必要なこと

良い指導者,優秀な教育者とはどのような人なのでしょうか。教育の成果を出すためには,学習者にどのような働きかけを行えばいいのでしょうか。ハーバード大学のロン・ファーガソンによると,教育の成果を高める要因は2つあるそうです。

①「勉強圧力」

教師が学生に対して勉強に励むよう発破をかける度合い。教育者が学生のがんばりや教材への真剣な取り組むをどれだけ後押しするか

②「勉強支援」

教師が学生にモチベーションを感じさせる度合い。学生が自分との関連性を感じられるかどうか,学生と教師の間の個人的つながりの感覚

 教育の成果を出すためには,以下の記事で述べた通り,「学習」を頭を働かせる「活動」にすることが大切です。

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優秀な教育者は,学習者に能動的な活動を促すことができるのです。

[……]優秀な教育者は学生を、頭を働かせる「活動」としての学習に深く関与させるのである。また、優秀な教師はモチベーションと支援を与える。学生が学習に意味を見出す手助けをし、自主性と自分に関連性があるという感覚を与える。

学習者にモチベーションを与えることが大切

上記のような研究結果より,教科書や学習内容の解説が上手くできるかどうか以上に,教育者が学習者にモチベーションを与えられるかどうかが重要であると言えます。『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』に次のような記述があります。

ワイマンを取材したところ、教師はもっとスポーツコーチのようであるべきだと説明してくれた。[……]教育者は学生に対して「思考という難しい作業をやりとげるために」ベストを尽くす動機づけを行うべきだ、とも。つまり、人には感情面の支援、励ましが必要なのだ。

例えば,教育者は学習者に以下のような働きかけができるとよいのではないでしょうか。

  • 将来の夢や目標を思い描かせる
  • 勉強することの意味や目的について話し合う
  • 一見役立たないように思える教科,意欲が湧かない教科についても,学習することの意味を考えさせる
  • 学習目標を持たせる
  • 学習が上手くいかないときに,学習方法についてアドバイスする
  • 結果が付いてこないときも,努力を認めて励ます

保護者様がお子様にこのような働きかけをするのも効果的だと思います。ぜひ家庭教育に取り入れてみてください。

 

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『Learn Better』から学ぶ効果的な学習法⑤~本当に成果が出る学習法とは?

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(アーリック・ボーザー著/英治出版)をもとに,効果的な学習法について探ります。

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

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知識を習得するには「能動的な学習」が大切

心理学者のリッチ・メイヤーは,人は自分の知識を能動的に形にする行為によって知識を習得するという様々な研究結果を発表しています。学習とは,脳を働かせる「活動」であると彼は述べています。

では「能動的な学習」とは具体的にどのような方法なのでしょうか。以下,よくある学習法を挙げてみましたが,それぞれ能動的な学習かどうかを考えてみてください。

1.蛍光ペンでキーワードをなぞる

2.繰り返し読む

3.内容を自分なりに要約する

4.自分で自分に問題を出す

 

能動的な学習は,上記3.4.のみです。それぞれについて詳しく見てみましょう。

1.蛍光ペンでキーワードをなぞる

能動的な学習とは言えません。マーカーを引くのは人が知識を構築するのに十分な行動ではないと本書では述べられています。ケント州立大学のジョン・ダンロスキーらの研究によって,実際に蛍光ペンでキーワードをなぞる学習法は効果がないと証明されています。

2.繰り返し読む

能動的な学習とは言えません。1.同様,頭を働かせる「活動」を促すには至らないと述べられています。ダンロスキーらの研究によって,繰り返し読む学習法の効果も限定的であることが証明されています。

3.内容を自分なりに要約する

4.自分で自分に問題を出す

能動的な学習であると言えます。内容を自分なりに要約したり,自分で自分に問題を出したりすると,知識の創造という手順を踏むので,情報を記憶しやすくなります

「お手軽な学習法」の効果は薄い

「時間がないから」「手間がかかるから」という理由で,1.2.の学習法のみにとどまり,知識が定着しないと悩んでいる生徒さんが少なくありません。3.4.の「能動的学習法」は確かにひと手間かかりますが,1.2.の学習法で量をこなすよりも成果が出やすいです。

「教える職業に就いている者が能動的学習を行わないのは、倫理的に問題です」[……]「医者が効果の薄い薬を処方するようなものです。あなたが患者だったら、医療ミスだと考えるでしょう」

3.については親が子どもに「今日は何を勉強したの?」「説明してみて」と声かけしたり,4.については市販の一問一答集や赤シート教材を使用したりすることでも代替可能だと思います。ぜひご家庭でも能動的な学習法を取り入れてみてください。

 

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『Learn Better』から学ぶ効果的な学習法④~学習することの意味を理解する

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(アーリック・ボーザー著/英治出版)をもとに,効果的な学習法について探ります。

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

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学習することの意味は「思考を形成すること」

学習することの意味とは何でしょうか。本書で取り上げられている次のような例をもとに考えてみましょう。

ある生徒は意味が分からずに数学の問題に次のように回答しました。

10×3=30

10×13=130

20×13=86

30×13=120

31×13=123

29×13=116

22×13=92

 

彼は数学をよく理解しておらず,このような間違った答えを導き出しました。解法のパターンが分からず,自分で計算手順をひねり出したようです。

著者は学習において,知識の丸暗記ではなく,基本的な概念やスキルを学び応用することこそが大切だと述べています。

スキルや知識を理解できていれば、状況が変わってもそのスキルや知識を使いこなせる。[……]どんな状況でも応用が利くのだ。

[……]私たちは意味を知るため、思考を形成するために学ぶ。とどのつまり知識の応用が可能なのは意味がわかってこそだ。

先の計算問題についても,意味がわかっていれば別のアプローチがとれます。

10×3=

10×13=

20×13=

30×13=

31×13=

29×13=

22×13=

あなたはすぐにパターンがあると気づき、13という数字を活用すれば一連の問題が解きやすくなるのを理解するだろう。

「正解」ではなく「考え方」を知ろうとすることが大切

「答えを教えて!」とすぐに正解を知ろうとする生徒さんがいます。私はいつも「答えではなく,なぜその答えになるかが大事だよ」「なぜ間違えたのか,正しい解き方はどうなのかをしっかり確認しよう」と声かけしています。

先の計算問題でも,正しい答えを知ったところで,解き方が分かっていなければ,次に同じような問題が出題されても,正解を導き出すことは難しいでしょう。「計算ミスだった!」「電卓で計算したら正しい答えが分かったよ!」で終わりにしてしまうのはもったいないと感じます。これでは,もちろん成績も上がりません。このような取り組み方は,著者が言うところの「学習」からも外れるでしょう。

テストの得点を上げるために,問題数をこなしても,根底にある考え方や規則が理解できていなければ,効果的な学習とは言えません。何を学ぶときも一つ一つの課題とじっくり向き合い,「なぜそうなるのか」「このことから何がわかるか」をぜひ考えるようにしましょう。

 

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