『ほめると子どもはダメになる』から学ぶ教育①「叱らないと弱い大人になる」

『ほめると子どもはダメになる』(榎本博明著/新潮新書)では,「ほめる子育て」に関する弊害が紹介されています。今回は,子どもを叱らずに育てると,どのような大人になるのか考えてみたいと思います。

ほめると子どもはダメになる (新潮新書)

ほめると子どもはダメになる (新潮新書)

 

 

叱らない子育ての弊害

1.打たれ弱い大人になる

だれにとっても人生というのは思い通りにならないことの連続だ。[......]

そうした逆境に耐える力がないと,人生を前向きに切り開いていくことなどできない。[......]

分かってきたのは,レジリエンス(=逆境に耐える力)を高めるには,無菌室のような過保護な生活空間で育つのではなく,適度な挫折を繰り返し経験することが必要ということだ。そうした負荷がかかるこで,いわば筋トレのように心が鍛えられていく

私が指導していた生徒さんで,非常に打たれ弱い子がいました。授業中居眠りをしている,講師のアドバイスを聞かない,宿題をやってこない状況が続いていたので,きつめに叱りました。「このままの状況が続くと,どうなるか考えてごらん?成績を上げたいって言ってるけど,行動が伴っていないよね?このままじゃ成績なんて上がるはずないよ」と伝えました。すると,急に元気を無くし,「体調が悪い」と言ったり,授業を欠席したりすることが増えました。

その子の親は,まさに「ほめる子育て」を実践していました。「子供のやる気を出すために,成績が悪くても褒めている」「いつも褒めるべき点を探すのに疲れる」とおっしゃっていました。この生徒さんの打たれ弱い性格は,「褒めるのが当然」「本来叱るべき場面で子供を叱らない」という家庭教育に由来しているのでしょう。

2.勘違い人間になる

「ほめて育てる」の第二の弊害として,自分を振り返る習慣が身につかないということがある。[......]

最近の若手にやたらポジティブすぎる者がいて困るという声をきくことがある。ミスをするたびにひどく落ち込むタイプも困るが,ミスをしてもまったく気にせず,同じようなミスを繰り返すタイプにも悩まされているという。[......]

至らない点があっても,修正すべき点があっても,そこをはっきり指摘されずに,ほめられてばかりいたら,いつまでもそれらは修正されない。だから本人は自分の弱点や能力の現状を把握できず,勘違いだらけの人間になっていく

先ほど例に挙げた生徒さんは,こちらにも当てはまります。成績が悪くても全く気にせず,なぜかそのままのやり方で成績が上がると信じ込んでいました(実際は問題が山積みでした)。現状を客観的に把握する力が著しく低かったのは,成績が悪くても毎回親に「頑張ったわね。すごい」と褒められていたからでしょう。このような性格だったので,講師のアドバイスも全く吸収できず,最後まで状況を改善することができませんでした。

3.頑張ることができない大人になる

ほめることに付随する厳しさの欠如は,「頑張ることができない心」を生み出すという形でも悪影響を及ぼしている。

子どもたちに不快な思いをさせたくない。不満をもたせたくない。それは思いやりなのかもしれないが,そのような甘さが「頑張ることができない心」を生み出し,

やらなければいけないのはわかているけど,やる気がしない

このままじゃダメだって思うのだけど,意思が弱くてすぐに流されちゃう

といったかたちで若者たちを苦しめている。[......]

子どもたちにイヤな思いをさせないためにできるだけ叱らず,良い気分になれるようにできるだけほめて育てようという姿勢が,あらゆる厳しさを排除する。勉強するにも子どもたちに強制するのはかわいそうだから,興味のない勉強を無理やりさせるのはやめて,できるだけ子どもの興味を引き出すように心がけようということになる。

例の生徒さんの親は,勉強に対して子供に興味を持ってもらえるよう,自ら自宅でミニ講義をされていました。さらには,テレビを見る子供の代わりに宿題をやってあげたり,模試をつくってあげたりするのも,日常茶飯事だったようです。「親がやってくれて当たり前」の状態になっており,子供自身でモチベーションをコントロールしようとしたり,試行錯誤したりという経験がなく,「自分で頑張る」ということができませんでした

以上,叱らない子育てを行うと,どのような性格に育つか,具体例を挙げながらご紹介しました。叱らない子育ては,将来社会で活躍できない大人を生み出してしまいます。一人でも多くの保護者様に,適切な場面で叱ることの重要性を知っていただければ幸いです。

 

 

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