『ほめると子どもはダメになる』から学ぶ教育②「子供を叱らない親が多い理由」

子供を叱らないと,弱い大人になってしまうことについては,前回の記事で述べた通りですが,なぜ子供を叱らない親が多いのでしょうか。『ほめると子どもはダメになる』をもとに,その理由について考えてみたいと思います。

子供を叱らない親が多い理由

1.「ほめて育てる」マニュアル依存と勘違い

欧米で子供をよくほめるのは,幼いころから親と子供が切断され,越えられない壁があるため,言葉で愛情や励ましをたえず伝えていかないと,心がつながっていかないということがあります。一方,親子が切り離されずに溶け合っている日本社会では,ほめる前からすでに甘えによる心の交流がイヤというほど行われています。

このような欧米と日本の文化的違いを考慮せず,メディアでは「ほめる子育て」という表面的な部分のみ報道します。海外のやり方は何でも素晴らしい,日本は遅れてると言いたがる浅い専門家や評論家が,その思想をもてはやし,日本の教育界に広まっていきました。

2.気まずさを回避したいという思い

「叱ることで気まずい状況になるのを避けたい」という親の心理が要因となり,「叱らない子育て」の考え方がここまで浸透したと著者は述べています。

[......]なぜ本のタイトルや前書きで「叱らない子育て」をアピールするのか。それは,自分にも甘く子供にも甘い親に受けるからではないか。

叱るのはエネルギーがいる。叱らないで済むというなら,それはラクでいいということになる。子育てでラクをしたいという親にとって,「叱らない子育て」でうまくいくというのは,とても魅力的なわけである。

さらに踏み込んで親の心理を分析すると,社会的視点が欠如し,子育ての私事化が進んでいると著者は述べています。

社会の役に立てる人間に育てて送り出すとか,社会の荒波に負けずに立派にやっていける人間に育てあげるというよりも,親自身の自己愛を満たすための子育てになってはいないだろうか。

3.やさしさのはき違え

欧米では,公共のマナーに反する子供を見かけたら他人でも大人が注意するというのが常識ですが,日本では一般的ではありません。マナー違反をしたという事実は棚上げして,注意された子はイヤな思いをするだろうにとか,その子も悪気はなかったのだろうしなどと,マナー違反をした子の気持ちまで思いやったり,マナー違反をした子の母親の気持ちまで配慮します。

このような日本的な思いやりの心は否定すべきものではないが,どのように思いやるかが大切だと著者は述べています。

叱ることで子どもが傷つき落ち込むのはかわいそうだという形で思いやるのか,もっと長い目で見てここで厳しく叱って社会的規範を叩き込んでおかないと後々社会適応に苦労することになりかわいそうだという形で思いやるのか。

子供を傷付けない・守ることばかりに気を取られた結果,子供が将来,社会に適応できなくなってしまうのであれば,その方が「かわいそう」ではないでしょうか。「今,何が問題になっているのか(子供の気持ちではなく,マナー違反が問題のはずです)」「叱らないと後々どうなるか」と広い視野から物事を考え,子育てを行うことが大切です。

 

 

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