『トヨタの問題解決』((株)OJTソリューションズ/中経出版)を参考に,教育のあるべき姿や目指すべき方向性について考えてみたいと思います。
問題解決力とは?
問題とは「あるべき姿(理想・目標)」と「現状」のギャップであり,問題解決とは「現状」を「あるべき姿」に近づけることです。すなわち問題解決力とは,「現状」を「あるべき姿」に近づける力のことです。(問題解決については,本書で詳しく説明されていますので,ぜひご覧ください)。
問題解決力=社会を生き抜く力
本書において,以下のような記述があります。
問題解決力は,トヨタでしか機能しないような特別な能力ではありません。どんな職場,仕事にも問題があり,それを解決することが,生産性の向上や売上アップにつながります。
問題解決力は,業界や業種,職種を問わず,必要とされる能力なのです。
仕事のみならず,生活面でも問題解決力は必須です。例えば,習い事が上手にできなかったとき,「どうやったら上手くできるんだろう」と考え対策を立てる,友達とケンカをしてしまったとき,「どうやったら仲良くできたんだろう」と考え次に生かすことも,問題解決であると言えます。問題解決力が乏しければ,同じ過ちを繰り返し,成長することができません。社会を生き抜く上で,問題解決力は必須の力なのです。
親こそ問題解決力を身に付ける必要がある
子供だけ問題解決の手法を学んでも意味がない
近年,子供向けの問題解決・ロジカルシンキング教室が増えてきています。受験合格至上主義の強い日本に新風がもたらされ,非常に興味深い動向です。弊社でも問題解決や自律思考の力を高める子供向けトレーニングを提供しています。(問題解決と自律思考の違いについては,別途記事にする予定です)。
しかし単純に手法を学ぶことと,日常生活で実践できることは異なります。子供に問題解決の手法のみ指導するだけでは,習慣化が難しいです。家庭で子供に合った声掛けをすることによって,思考法を定着させることが大切なのです。
例えば,授業中に自分で考える訓練をしたのに,家で親が子供の行動を指図したとします。すると次に授業に来る際には,また「自分で考えられない子」に逆戻りしています。同様に,授業中に子供の自信を引き出し,積極的に考えられるようになったのに,家で親が子供を否定していると,また「自信がない消極的な子」に逆戻りします。これでは毎回授業で一から指導しなければならず,効果が一向に表れません。
問われるのは親の問題解決力
親は子供の「あるべき姿(理想・目標)」と「現状」を把握し,「現状」を「あるべき姿」に近づける声掛けや接し方を知る必要があります。子供の資質・性格等の素地は,多くの時間を過ごす家庭環境で決まります。すなわち子供に問題解決の手法を学ばせるだけでは,問題解決力を向上させることは難しく,親自身が問題解決力を高め,子供への効果的な接し方を学び実践していく必要があるのです。
弊社では,親の問題解決力を高めるため,2つの取り組みを行っています。
(1)子供の現状を伝える
問題を解決するには,現状把握が必須です。しかし,親はなかなか子供の様子を客観的に観察できません。「うちの子はこうであるはず!」という親自身の主観が影響し,冷静に現状を分析できていないことが多いです。弊社では毎回トレーニングの後,保護者様にメールでお子様の様子をお伝えし,客観的な現状把握を促しています。
(2)保護者様向けトレーニングを開催する
基礎となる考え方をお伝えしながら,子供の「あるべき姿(理想・目標)」へ「現状」を近づける方法を考案する訓練を行っています。講師が一方的に教育法を指示するよりも,保護者様ご自身で考え,割り出していただいた方が,理解が深まるためです。
講師が接し方や声掛け方法を指示してしまうと,「こういう時はこうする!」と教育法の丸暗記状態になってしまい,応用が利きません。お子様の状況が変わってきているのに同じ教育法に固執したり,例外に対応できなくなってしまいます。
講師がいなくても,保護者様ご自身で効果的な教育法を見出せること,すなわち問題解決能力のある人・自律した人を育てられる人を増やすことを目標に事業を行っています。
これからの時代に必要な教育内容とその対象
公務員・国家資格制度の崩壊や大企業の衰退,大規模なリストラがいつでも起こり得る時代に突入しています。これからの時代,問題解決力=社会を生き抜く力がますます必要になってきます。
受験合格や学歴取得のみをゴールに据えた教育ではなく,問題解決力=社会を生き抜く力を高める教育により関心が集まること,社会人や子供のみならず,子供を持つ親を含めた社会を生きる人全員に教育の対象が広がることを望みます。
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