『トヨタの問題解決』から教育を考える④「問題や対策を親が決めつけない」

トヨタの問題解決』((株)OJTソリューションズ/中経出版を参考に,家庭教育で陥りがちな状況とその対策について考えていきましょう。

「問題ありき」「対策ありき」ではうまくいかない

トヨタの問題解決』に次のような記述があります。

ステップ①「問題を明確にする」と次のステップ②「現状を把握する」は非常に重要なステップです。[......]

「ステップ①と②で問題解決の70%は決まると言っても過言ではありません。実際に問題解決に取り組むと,このプロセスに70%の時間と労力を費やすことになります。それだけ問題テーマを選ぶことは重要なのですが,このステップをすっ飛ばして,問題テーマありき,対策ありきで,問題解決に取り組んでしまうケースが少なくありません。これでは『本当の問題』を解決できません」

どういうことか,家庭教育の例を挙げて説明していきます。

「問題ありき」の具体例

例えば「うちの子は出来が悪い」という考えです。このような問題設定をしてしまうと,そこで思考が停止してしまい,解決は不可能です。「出来が悪い」の一言で片づけてしまうのではなく,問題を正確かつ詳細に把握する必要があります。勉強のやり方が分からないのか,勉強時間が足りないのか,学んだことを生かせないのか,そもそも勉強に対するやる気がないのか――深掘りをしてまず問題を特定することが非常に重要です。(実際には,保護者が問題を直視したくない場合に,「うちの子は出来が悪い」という言葉で逃げることが多いような気がします。)

問題を正確に把握できなければ,対策を考えることは難しいため,現状改善は不可能です

「対策ありき」の具体例

(1)「学習塾に入れる」という選択

例えば「勉強に対するやる気がない」のが問題である場合,「学習塾に入れる」ことで状況改善を図るのは難しいです。「学習塾に入れる」という選択肢は,「勉強に対するやる気を引き出す」という問題への打ち手になっていないためです。

親の不安感が強く,「このままではいけない,とりあえず塾に入れないと」という焦りから,「学習塾に入れる」という対策を取っている家庭が多いです。「子供の成績が悪い。学習塾に入れなければ!」というところから出発し,「どの塾に入れようか」と悩む――しかしどの塾に入れても,「勉強に対するやる気がない」のですから,知識を吸収できるわけがありません。

「学習塾に入れる」という対策ありきではなく,「どうやったら子供のやる気を引き出せるか」という問題に対する打ち手を考える必要があります。たとえば,家庭教育で積極的に褒めて「自分はできないんだ」という子供の考えを変えることが有効かもしれません。まずは自宅学習教材の難易度を下げ,「分かる」「出来る」体験を増やし,自信や興味を高めることか有効かもしれません。これらの本質的な対策は,「学習塾に入れる」という対策に固執している限り,出てこないものでしょう。

 (2)「学習時間を増やす」という選択

例えば「勉強のやり方が分からない」ことが問題であるのに,がむしゃらに学習時間を増やしても状況は改善しません。問題に対する打ち手になっていないためです。それなのに「もっと勉強しなさい!」と周囲が口うるさく言うと,子供は困ってしまい,ますます状況は悪化します。

「勉強時間を増やすと勉強が出来るようになるはずだ」という思いは一度捨て,「どうやったら子供が勉強のやり方を見つけられるか」を冷静に検討する必要があります

家庭教育の問題解決において重要なこと

このように,子供の抱える問題を解決するためには,問題や取るべき対策を親が決めつけてしまわないことが肝要です。子供の様子をじっくりと観察し「本当の問題」は何かを探ること,親が自身の不安や焦り・思い込みに打ち勝ち,広い視野から問題に対する打ち手を考案することが求められるのです。

 

 

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