『トヨタの問題解決』から教育を考える⑧「親子が変わらない原因とその対策」

子供の状況が改善しない大きな要因として,親が家庭教育を変えられない,途中で諦めてしまうことが挙げられます。対策が分かっていて,あとは実行するだけなのに,できない――なぜこのような事態になってしまうのか,どうすれば家庭教育を変えることができるのかについて,『トヨタの問題解決』((株)OJTソリューションズ/中経出版)をもとに考えていきたいと思います。

家庭教育を改善できない理由

①日常の習慣を変えるのが困難だから

トヨタの問題解決』に次のような記述があります。

「楽をしたい」というのが人間の本質です。どうしても日常業務に追われて,対策の実行があとまわしになってしまうことがあります。

家庭教育に当てはめて考えてみます。

着替えや片付けなど,子供に身の回りのことを任せること(=対策)が,自律化への第一歩だと気づいたとします。しかし,いざ子供に任せてみると,テキパキとこなすことができません(これまで自分でやってこなかったのですから当然です)。親がやってあげた方がスムーズに事が進み「楽」なので,結局また親が子供の代わりにやってあげる教育に逆戻りします。

このように「まだ子供一人でできないから」「忙しいから」「はらはらして見ていられないから」と言って,親にとって「楽」な教育を施すことで,子供の自律化を阻んでいるケースが多くあります

②状況がなかなか改善しないから

家庭教育を変えられない,以前の家庭教育に逆戻りしてしまう理由の2つ目として,「状況がなかなか改善しない」ことが挙げられます。

そもそも,教育の効果は短期間で表れるものではありません。子供にもこれまでの思考・行動の癖が定着してしまっているので,家庭教育を変えても,子供の様子が実際に変わり始めるには数か月,あるいは一年以上かかることもあります。

 一方で原因・対策そのものが誤っているため,効果が出ない場合もあります。「状況が一向に良くならないな」と思ったら,原因分析・対策立案をもう一度実施するのがおすすめです(方法は以下の記事を参考にしてください)。

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 また効果が出なくても落ち込む必要はありません。『トヨタの問題解決』に次のような記述があります。

受動的な仕事をしていたら,失敗はしないかもしれませんが,なかなか成果も出ません。成果は,成功の成果だけではありません。失敗という結果を得ることも成果です。

これまでの家庭教育を同じように続けていれば,親がいらいらしたり,落ち込んだりすることは少ないかもしれませんが,子供の状況が劇的に良くなることは期待できません。勇気を持って家庭教育を変えてみると,色々なことが見えてきます。時には失敗するかもしれませんが,本質的な原因・対策に近づくことになるので,さらに良い方向に家庭教育を変えていくことができます

状況がなかなか改善しない場合も,前の家庭教育に逆戻りしてしまうのではなく,その原因・対策をじっくり探っていくことが重要です。

家庭教育を確実に改善する方法

上記①,②を取り除き,対策を着実に実行する,あるいは対策そのものを良い方向に変えていくためには,「やり抜かないといけない理由」をつくることが有効であると『トヨタの問題解決』では述べられています。「対策の成果を発表する機会を設けることが有効だ」とも記述されています。

弊社は保護者様セミナーを開催していますが,講師がメールで対策の効果についてお伺いしたり,複数の保護者様間で進捗・成果を共有いただく場を設けたりしています。対策そのものや実行方法が合っているかを確認する,改善点を模索するのはもちろんのこと,「周囲への情報共有」=「やり抜かないといけない理由」をつくる目的もあります。

 自身で「やり抜かないといけない理由」をつくることも可能です。『トヨタの問題解決』でも紹介されている通り,自身で期限を決めて対策に取り組み,効果の確認を行うことも(上述「周囲への情報共有」よりは少し弱いかもしれませんが)効果的です。

子供が変わるまで親が諦めないことが大切

「子供の言動が変わる」という成果が見えるまで,親が対策を実行・改善し続ける必要があります

百聞は一見にしかず,百見は一考にしかず,百考は一行にしかず,百行は一果にしかず――つまり,最終的に成果を残さなければ意味がないということをあらわす中国のことわざですが,問題解決のステップも同じです。

トヨタの問題解決』で述べられている通り,成果が表れなければ,問題解決に取り組んだ意味はあまりありません。対策を考えただけで実行に移さない,少しやってはみたもののすぐに無理だと諦めることは止めて,常に原因・新たな対策を考え,子供の言動に変化が見られるまで粘り強く取り組んでほしいと思います。

 

 

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