親は「保護者」ではなく「教育者」である
今の親は,「先生=教育者」「自分=保護者」であると考え,「教育は先生がやる仕事でしょう」と言って教育から逃げていると『ファーストクラスに乗る人の教育』では記述されています。親が保護者になると「私の仕事は保護すること」という名目で子供を甘やかせてしまう,親は保護者ではなく教育者として先生と協力体制をつくる必要があるとも述べられています。
※本ブログでも「教育者育成」というカテゴリーを設けていますが,塾の先生,学校の先生,習い事の先生のみを対象にしたものではありません。親も「教育者」と見なし,ご家庭で行ってほしい教育についても多く触れています。
「教育者」でない親とは
「教育者」ではない親とは具体的にどのような親でしょうか。例を見ていきましょう。
(1)「塾や学校で何とかしてください」「私は学歴が低いから」「仕事で忙しいから」と逃げる親
たしかに塾は勉強を教える場所です。学校では生活的な面に関する教育も施されます。しかし,同じ教育を受けたとしても,子供の性格・考え方によって理解度や吸収率が違うのが現実です。
他人の言うことを素直に聞き入れられるか,約束を守ることができるか,自分で考えて試行錯誤できるか,出来ないことや分からないことはきちんと相談できるか――このような性格的側面が学習状況に大きな影響を及ぼすのです。
子供の性格・考え方の素地の大部分は,多くの時間を共に過ごす親との関わりによって形成されていきます。したがって,家庭教育は非常に重要です。学歴がなくても,子供の様子を観察し,良い方向に導く声掛けや接し方を実践することはできます。塾や学校任せにせずに,家庭でも親が教育を行う必要があります。
(2)「うちの子はできないから」「まだ早いから」と保護する親
できないからと言って親がずっと保護している,子供の代わりにやってあげていると,いつまでたっても子供自身でできるようになりません。親が上限を決めてしまうと,それを超えて子供が成長することはありません。子供を信じてまずは任せてみる,辛くても見守ることが大切です。子供の将来を考えて手を離していけるのが「教育者」なのです。
(3)「子供がやりたいと言っているから」と甘やかせる親
子供が遊びたいと言っているから遊ばせる,嫌だと言っているから習い事を辞める,泣くからおもちゃを買い与える――このように何でも子供の言う通りに動く親が多いです。子供の考えが浅いとき,目の前の楽しみを優先させて辛いことから逃げているとき,感情で行動しているときには,きちんと諭す必要があります。そうでなければ,わがまま放題の視野が狭い大人に育ってしまい,社会に出たときに子供自身が苦労することになります。ときには厳しいことを言い,子供を良い方向に導くのも「教育者」の役割です。
親が「教育者」になれない理由とその対策
まずは,親が「教育者」になれない理由を考えてみたいと思います。
なぜ親は「教育者」になれないのか
現状を変えるのが面倒だから
これまでの習慣を変えるのが面倒な場合,親は(1)のような逃げの姿勢に走ります。塾や学校任せ,自身の学歴や忙しさなどを理由にして,自身の行動を省みたり,改善しようとしたりしないのです。他人任せ,自分以外の物のせいにすることは,自身の考え方や行動を変えていくことよりも簡単だからです。
(3)についても説明がつきます。泣きわめいている子供を諭したり,断固として考えを変えない子供を説得するのは,手間と時間,忍耐が要ります。子供の意見をそのまま通した方が親にとって楽なので,「子供がこう言っているから」と無意識に盾にしますが,大人としてより良い選択が見えていることも多いはずです。
自身の感情に打ち勝つことができないから
「子供ができないのを見るのが辛い」「はらはらする」「イライラする」といった親の感情から(2)のように子供をすぐに保護してしまいます。最初は誰でもできない状態から出発し,失敗を繰り返してできるようになるものですが,その過程を認めず,できなければすぐに子供の代わりにやってあげるのです。
親と子供を同一視しているから
「できないと子供がかわいそう」「できない子供だと親までダメだと思われる」など,子供の状態・感情と親のそれが同じである(と他者から思われる)と錯覚している場合も,(2)のように子供を過剰に保護してしまいます。
※親は自身の責任のみ果たしていれば問題なく,先回りして子供の失敗を防いだり,子供を過剰にサポートしたりする必要はありません。逆に子供を過保護でがんじがらめにして,自分で考え行動できない大人にしてしまう方が「子供にとってはかわいそう」であり,「子供をダメにしてしまった親」だと周囲から思われます。
親が「教育者」になるためには
上記3つの原因を取り除く必要があります。どうすれば原因が消滅し,親は「教育者」に近づくのでしょうか。例えば次のような対策があります(これらの対策はテラックの保護者様向けトレーニングで実際に行っているものです)。
- 親が教育に参加する意識を持つ
- 家庭教育の重要性を知る
- 広く長期的な視野を持ち,現在の教育を続けると子供が将来どうなるかを考える
- 子供の理想の将来像・教育のゴールを明確にし,それに近づいているか考察する
一人でも多くの親が「教育者」となり,自律した(=『ファーストクラスに乗る人の教育』筆者の表現では「モテ稼げる」)大人が増えてほしいと思います。
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