『エッセンシャル思考』×教育①「重要なこと以外を捨てることの重要性」

『エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする』(グレッグ・マキューン=著 高橋璃子=訳/かんき出版)を参考に,効果的な教育について考えていきたいと思います。

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

 

 エッセンシャル思考とは?

エッセンシャル思考は,より多くのことをやりとげる技術ではない。〔......〕自分の時間とエネルギーをもっとも効果的に配分し,重要な仕事で最大の成果を上げるのが,エッセンシャル思考の狙いである。

エッセンシャル思考に基づき,「より少なく,しかしより良く」という考え方のもと,「やることを計画的に減らす」という行動を取ることで,人々は「成功と充実感」を得られます。

逆に,非エッセンシャル思考においては,「どれも大事だ」「全部やらなくては」という考え方のもと,「やることをでたらめに増やし」,結果として人々は「無力感」に陥ってしまいます。

エッセンシャル思考を身に付ければ,エネルギーの使いどころを必要最小限にできるため,いちばん重要なものごとにおいて最大の成果を上げることができるのです。

将来,社会で活躍する子供たちにとって,エッセンシャル思考を身に付けることは重要です。そして,子供たちにエッセンシャル思考を習得してもらうためには,家庭教育者である保護者様に,まずエッセンシャル思考を知っていただかなくてはなりません

またエッセンシャル思考は,仕事面だけでなく生活・学習面でも役立つ考え方です。保護者様がエッセンシャル思考を体得することで,お子様を「あるべき姿」に近づけるためのエネルギーの向け方,やった方が良いこと・無駄なことが分かるようになります。エッセンシャル思考は,家庭教育を上手く行うコツであるとも言えるのです。

エッセンシャル思考の基礎となる3つの考え方

エッセンシャル思考を身に付けるためには,以下の基本を理解することが不可欠である,と本書では述べられています。

1.選択

2.ノイズ

3.トレードオフ

それぞれについて詳しく説明していきます。

1.選択――選ぶ力を取り戻す

エッセンシャル思考の人は,選ぶ力を無駄にしない。その価値を理解し,大切に実行する。選ぶ権利を手放すことは,他人に自分の人生を決めさせることだと知っているからだ。

一方,非エッセンシャル思考に陥っている場合,人々は選択肢を考えようとしません。言われたことをやるしかないと思い込んでいます。

選ぶことを忘れた人は,無力感にとらわれる。だんだん自分の意志がなくなり,他人の選択(あるいは,自分自身の過去の選択)を黙々と実行するだけになる。せっかくの選ぶ力を,すっかり手放してしまうのだ。これが非エッセンシャル思考の生き方である。

家庭教育において,「一度決めたことだから」という理由で,何となく惰性で続けている取り組みはないでしょうか。「子供が言ったことだから」「友人が良いと言っていたから」「テレビで紹介されていたから」など,無条件で他人の意見を取り入れたり,情報に振り回されたりしていないでしょうか。吟味・選ぶことをしないのは,非エッセンシャル思考の生き方です。

期待している効果が得られなければ,取り組みを止めるのも,立派な「選択」です。「一度決めたことだから」と過去の選択に囚われる必要はありません。子供が言ったことでも,友人やメディアが「良い」と評価したものでも,その行動を取ることで,子供・保護者様自身が思い描く理想に近づかないならば,取り入れないという選択をすることが,エッセンシャル思考の生き方です。

2.ノイズ――大多数のものは無価値である

努力は大切だ。だが,努力の量が成果に比例するとはかぎらない。がむしゃらにがんばるよりも,「より少なく,しかしより良く」努力したほうがいい。〔......〕

努力の量と成果が比例するという考え方を捨てたとき,エッセンシャル思考の大切さが見えてくる。

例えば,子供に「勉強量・時間が足りない!もっと勉強しなさい!」と言うのは,非エッセンシャル思考の典型例です。がむしゃらに勉強量・時間を増やしても,結果は付いてきません「より少ない勉強量・時間で,しかしより良く身に付くように」学習するのが,エッセンシャル思考の生き方です。

エッセンシャル思考の人は,たっぷりと時間をかけて選択肢を検討する。やるべきことを正しく選べば,その見返りはとてつもなく大きいことを知っているからだ。エッセンシャル思考の人は,多くをやらなくてもすむように,多くを吟味するのである。

「より少ない勉強量・時間で,より良く身に付く学習方法」を考えるところから,エッセンシャル思考がスタートします。勉強量・時間をがむしゃらに増やす前に,例えば,次のようなことを検討します。

  • 取り組む問題集はそれで良いか
  • ノートの使い方は適切か
  • 学習への取り組み方は適切か(例:間違いを放置していないか,集中して取り組めているか)
  • 目標は明確か,高すぎる無謀な目標を掲げていないか

がむしゃらに勉強量・時間を増やすよりも,学習方法改善に時間やエネルギーを注いだ方が成果に繋がります

「勉強しなさい!」と言うではなく,「どうやって勉強するのが良いか,まず考えよう」という姿勢で子供に接するのが,エッセンシャル思考に基づいた教育です。

3.トレードオフ――何かを選ぶことは,何かを捨てること

エッセンシャル思考の人は,トレードオフを当たり前の現実として受け入れている。そんなものなければいいのに,とは考えない。「何をあきらめなくてはならないか?」と問う代わりに,「何に全力を注ごうか?」と考える。

一方,非エッセンシャル思考の人は,トレードオフが必要な状況で全てやろうとします。部活,学校の授業,委員会活動,習い事,塾,読書―全て捨てられないものと見なし,いずれも成果が出ないのに,子供に取り組ませ続ける親が少なくありません

トレードオフから目をそむけても,トレードオフから逃れることはできません。どれも捨てられないからと言って,全てやり続けた場合,中途半端な結果が待っていると本書では述べられています。

ハーバード大学に息子を合格させるために,いちばん重要なこと以外を切り捨てた夫婦の例が,本書では挙げられていました。ハーバード大学に合格するのが大事というわけではなく,著者はその夫婦のエッセンシャル思考を称賛しています。

トレードオフは痛みを伴うが,絶好のチャンスでもある。選択肢を比較検討する中で,自分の本当の望みを明確に知ることができるからだ。(サウスウエスト航空のように)一貫した選択ができれば,その結果は理想的な成功となって返ってくる

部活,学校の授業,委員会活動,習い事,塾,読書――何がいちばん重要か考えるとき,子供・親自身の理想が見えてきます。勉学が優先なのであれば,学校の授業と塾に絞り,その他を捨てる。スポーツ選手・音楽家になりたいなど,将来の夢や子供のやりたいことを優先させるのであれば,部活と学校の授業のみに絞り,その他を捨てる。トレードオフは,「こうなりたい!」という心の底にある理想を知る良いチャンスなのです。そして,全力を注ぐ対象を絞り込むことで,大きな成果を得ることが可能になります

 以上,エッセンシャル思考の基礎となる考え方をお伝えしました。次回は,エッセンシャル思考に欠かせない,見極める技術についてご紹介します。

 

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