成果が出る練習の仕方とは
長時間一つのことに取り組んでいても,なかなかうまくいかない人がいます。一方で,物事に粘り強く取り組み,挫折や困難を乗り越え,成果を出し続けられる「やり抜く力」の高い人もいます。
毎日ピアノを練習していても,なかなか上達しない子もいれば,3日に1回しか練習しないのに,難しい曲を弾けるようになる子もいます。毎日勉強ばかりしていても,中程度の成績しか取れない子もいれば,部活や習い事をしたり,友達と遊んだり,好きなことをしながら,抜群の成績を取る子もいます。両者の違いはどこにあるのでしょうか。
認知心理学者のアンダース・エリクソン氏によると,エキスパートたちの練習の仕方は、他とは一線を画するそうです。成果を出す人たちは,具体的に次のような方法で練習を行います。
(1) ストレッチ目標の設定
得意なところを伸ばすのではなく,弱点の克服に努めます。
(2) 集中し目標達成を目指す
「できること」「まだできないこと」を明確に把握します。
(3) 繰り返し練習する
「できないこと」がすんなりできるようになるまで練習を重ねます。
(4)新たなストレッチ目標の設定
(2)→(3)→(4)を繰り返します。
エリクソン氏は,これを「意図的な練習」とよんでいます。
逆になかなか成果を出せない子どもは,次のような方法で,学習や練習をしていることが多いです。
(1) 目標がない
どうなりたいから,その課題に取り組むのか,考えられていません。
(2) 集中していない
時間が過ぎるのをただ待っている,その課題さえこなせばよいと思っています。「できること」「できないこと」を明確に区別せず,何となく練習や学習に取り組んでいます。
(3) 弱点から目を背ける
「できないこと」を避け,「できること」ばかり取り組もうとします。
このようなやり方では,いくら長時間取り組んでも成果が出ないので,注意が必要です。 ぜひ親が「新しくできるようになったことは何かな?」「まだできないことはあるかな?」「これから何に気を付ければいいかな?」と声かけして,子どもに「意図的な練習」をさせましょう。
勉強やスポーツ,音楽など,何でも高水準でできる子がいますが,そのような子どもは,長時間勉強や練習をしているわけではなく,友達と遊んだり,自分の趣味を極めたりと,積極的に様々な物事に取り組んでいます。小さなころから「意図的な練習」が自然とできているため,短時間で何でもコツを掴み,成果を出せるのでしょう。難関大学に通いながら,実はピアノやバイオリンの腕前が一流だったり,部活動で表彰されていたりと,いわゆる「がり勉」ではない子どもたちが案外多いものです。私の友人の東大生にも,このようなタイプが少なくありません。幼少期から,勉強でも運動でも,「意図的な練習」ができるように,親や先生が導いていたのでしょう。
効率よく成果が出せるかどうかは,練習や学習の仕方にかかっています。「意図的な練習」ができるようになれば,速いスピードで次々と目標を達成していくことができます。ぜひご家庭で子どもに声かけして,「意図的な練習」を取り入れてみてください。