適度な期待は子どものやる気を引き出す
がんばればもっとできるはずなのに,伸び悩んでいる子ども。「あなたならもっとできるはず!」「もう少しがんばって!」と声かけしたいけれども,子どもにプレッシャーをかけそうで躊躇してしまう……というご相談をよくいただきます。子どもに期待をかけるのは,よいことなのでしょうか。
適度な期待は,子どものやる気を引き出します。「これで十分だね」「よくできたね」とほめると,子どもはその時点で満足してしまったり,「自分はここまでの人間なんだ」と少し寂しく思ったりすることもあるでしょう。
ただし,声かけの仕方によっては,確かに子どもにプレッシャーを与えてしまったり,やる気を削いだりするので,次のような点に注意しましょう。
できている点はほめる
「この部分はいいね」とよい点は認めながらも,「さらにここもできるといいね」ともう一段上の目標を伝えましょう。目標だけ伝えると,「まだダメなんだ」と後ろ向きになりやすいので,よい点と併せて伝えるように心がけることが大切です。
生徒さんの実例をご紹介します。作文がやや苦手なAくんの親は,「他の教科ができるからいいかな」「あまり指摘しすぎて嫌になっても困るし」と,作文についてはあまり声かけしませんでした。Aくんも「これくらい書ければいいかな」と特に問題意識を持っていなかったようです。昔,Aくんの親が「こう書いた方がいいよ!」とAくんにアドバイスしていた時期もあったのですが,Aくんはしぶしぶ指摘された点を書き直すといった様子で,あまり改善が見られなかったそうです。
ところが私の教室に通い始め,「この部分はいいね!」「ここはもっとこう書くと分かりやすいかもしれないね」などフィードバックしていくうちに,「もっと分かりやすい作文を書くにはどうすればいいかな?」「この表現のほうがいいかな?」とAくんに向上心が芽生えてきました。
よい点を認めつつも,「ここを変えるともっとよくなるよ!」とがんばれば手の届く目標を子どもに伝え続けることで,一歩ずつステップアップしていくことができます。
具体的ながんばり方を伝える
「あなたならできるはず!」「がんばって!」と言われても,がんばり方が分からなければ子どもは困惑し,プレッシャーを感じてしまうでしょう。
具体例をご紹介しましょう。Bくんはお母さんに「ばく,将来パイロットになりたい!」と話しました。お母さんは「パイロットになるのは大変だよ!お勉強もできないといけないし,英語も話せないといけないね。体力もないといけないし。がんばろうね!」と言いました。それを聞いたBくんは「ぼくには無理だ。やっぱりやめておく」と後ろ向きになってしまいました。
「勉強も英語も体力も必要」というのは,確かにがんばり方を伝えているかもしれませんが,具体的に何にどのように取り組めばいいのか分からず,子どもを不安にさせてしまいます。「本当にできるのかな!?何だか大変そう……」と子どもはプレッシャーを感じてしまいます。
「パイロットになるには,お勉強をがんばった方がいいね」「学校のテストは80点以上を取れるようにするといいね」「体力も必要だから,今やってるサッカーはこのまま続けられるといいね」「中学校に入ったら英語もがんばろうね」「まだ小学3年生だもんね!時間はたくさんあるから,一つずつ取り組んでいこう!」など,どうやったら目標を達成できそうか,具体的な道筋を示すようにしましょう。
マイナスな表現ではなくプラスの言葉を使うようにする
同じことを伝える場合でも,表現によって子どもの受け取り方は変わってきます。「これをやらないといけないね。あれもやらないといけないね」「がんばらないと無理だよ」と言われると,焦って後ろ向きになってしまう子どもが多いです。「順番に一つずつやっていこうね」「まずはこれをがんばろう」「がんばれば大丈夫だよ」など,前向きな言葉がけをするようにぜひ心がけてください。
「ここまでできたね!」「もうちょっとがんばってみよう!」と子どもに適度な期待をかけ,ぜひやる気を引き出しましょう。
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