同じことを伝える場合でも,伝え方によって,相手に与える感情や影響は大きく変わってきます。次のような例を考えてみましょう。AとBはどちらも同じ状況でのコメントですが,受け取る印象はかなりちがうと思います。
A「また進級テスト不合格だったの⁉何回不合格を取るの!はずかしい……。もっとがんばらないといけないんじゃないの⁉」
B「進級テスト不合格だったんだね。最近、不合格が続いているね。でも先生からの評価は上がっているからいいね!『この部分がもっとできるといいね』って書いてあるから、そこをがんばれば、次こそ合格できるんじゃない⁉」
A「こんな簡単な問題を間違えたの⁉他の子はみんなできているわよ。本当にできない子ね!」
B「この問題を間違えたんだね。弱点がわかってよかった!次からできるようにしておこう。難しかったかな?それとも計算ミスかな?間違えることは悪いことじゃないけど、原因を分析して,次から同じ間違いを繰り返さないことが大切だよ」
A「また遊んでるの⁉いい加減にしなさい!何度言ったらわかるの!」
B「今は何をする時間だったかな?そうだね、宿題をやる時間だったね。どうして遊んでしまうのかな?叱られるのもイヤだと思うし、お母さんも叱りたくないなぁ。どうすれば宿題に集中できるか,一緒に考えようか!机の上にゲームが置いてあるからかな?集中しやすいようにお片づけをしようか!」
A「汚い字ね!書くのも遅いし……。もっと速くきれいに書けないの⁉それに,ここはカタカナでしょ!カタカナも書けないの⁉」
B「最近,がんばって日記を書いてくれているね。苦手なことにも自分から取り組む姿勢がとてもいいね!ひらがなは前より上手に書けるようになってきたね。慣れてきたら,もっと速くきれいに書けるようになるから,この調子でがんばろう!カタカナも書けるようになると,もっといいね!」
AとBを読んで,それぞれどのような気持ちになりましたか。Aのようなマイナスの表現だと後ろ向きの気持ちになり,逆にBのようなプラスの表現だと前向きになれることを感じ取っていただけたことと思います。
実際に,子どもは親の言葉がけや考え方から大きな影響を受けます。悲観的,否定的な言葉がけが多いと,子どもも「ダメだ」「できないんだ」とネガティブな考え方になり,逆に楽観的、肯定的な言葉がけが多いと,「できそう!」「よし、がんばってみよう!」とポジティブな考え方になりやすいです。
もちろん何の根拠もなく,「できるよ!がんばって!」とむやみに励ますのは効果的ではありません。「ここはいいね!」「もっとこうするとさらによくなるね!」「そうすればきっと夢を叶えられるよ!」と具体的な理由や対策を話しながら,明るい未来を子どもと一緒に思い描きましょう。
このように,伝え方を工夫するだけで,子どものやる気を引き出すことができます。ぜひマイナスの言葉がけをプラスの表現に変えるように意識してみてください。
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