その教育,本当に効果があるの?因果関係や第三の要因について考えよう

スタンドエフエムで本テーマについてお話ししたところ,再生回数が多かったのでブログにも記載しておきます。

stand.fm

「読書すると学力が高くなる」のは本当か?

これは『学力の経済学』で挙げられていた話ですが,「読書をすると学力が高くなる」という因果関係は不明で,「学力が高いから読書をする」という結果があるだけだということです。

「学力」の経済学

「学力」の経済学

  • 作者:中室牧子
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
Amazon

「読書」と「学力」以外の第3の要因,たとえば「子どもに対する親の関心の高さ」が関係している可能性があります。子どもに対する関心が高い親は,子どもに本を買い与えたり,勉強するように促したりします。

「読書をすると学力が高くなる」という相関関係がないのに,「読書しなさい!」と本を買い与えても効果は期待できません

読書をしても読解力は付かないかもしれない

実際,生徒さんや私の友人の中にも「読書が趣味です!」と言う人がいますが,会話してみると全然内容を理解できていないことがあります。このようなことを考慮すると,子どもに読書をさせること自体にどれくらい意味があるのかな?と疑問に思います。

保護者の方に聞かれることが多いので,私の子どものころのお話をすると,私はそんなに読書をしませんでした。親に「読書しなさい」と言われることもありませんでした。しかし国語は得意で成績もずっと良かったです。

なぜ読書をしなかったかと言うと,習い事や部活,勉強で忙しく,単純に読書をする時間がなかったからです。
日ごろから文章は接する機会はたくさんあります。特に学校の授業では,どの教科でも必ず文章に触れるでしょう。長さは短いかもしれませんが良質な文章なので,何かを学び取るには十分です。
小説や漫画のようなものを漫然と読むより,学校の授業で文章に触れる機会を大切にした方が(先生の話をきちんと聞く,問題を解いて理解を深める等),よほど凝縮された学びがあると子どもごころながらに感じていました。
(「読解力を高める」「学力を高める」という目的にそぐわないだけで,趣味で楽しむために小説や漫画を読むことを否定しているのではありません。)
★読解力や国語力の高め方に関するコンテンツはこちら
「読書しなさい」と子どもに押し付ける親がいますが,子どもが忙しかったり,読書があまり好きでなかったりする場合は,子どもの好きなことに時間をかけた方が学びが多いと思います。

本当に因果関係があるのか考えてみることが大切

もう一つ具体的な事例をご紹介します。「リビングで勉強するのがいいらしい」とアメリカの教育についての本で読み,子どもをずっとリビングで勉強させていた保護者の方がいました。
 
親がつきっきりで教え,口を出し過ぎた結果,子ども自身で考えられない状態になってしまいました。私がその子の授業を担当したとき,私が何か教えてくれるのをずっと待っていました。「分からないところはなかった?」「この問題はどうだった?」と質問すると,分からないところが分からないから質問できないようでした。
 
アメリカと日本では学習内容も異なり,親と子の関わり方も違います。親と子の境界線がはっきりしており,過干渉にならないからこそ,リビングで学習する学習法が効果的なのかもしれません。このような要因を考慮せずに安易に教育法を真似ると,今回のように逆効果になってしまうこともあるのです。
 
朝食を食べると頭がよくなる,テレビを見たりゲームをしたりするのが1日1時間以内の子は学力が高い……など,教育について巷では色々なことが言われています。その教育法を取り入れる前に,「本当に因果関係があるのかな?」「他の要因はないのかな?」と考えてみることが大切です。