今回は,効果的な教育の選び方について考えていきたいと思います。子供にどのような教育を行えばよいか分からない,「何となく良さそう」という理由から教育を選んでいる,現在実施している教育に自信がない,子供が理想的な方向に育っていない気がする――このような悩みをお持ちの方は,ぜひ参考にしてみてください。
科学的な根拠に基づく教育を行おう
『「学力」の経済学』(中室牧子著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)では,他人の子育て成功体験を真似しても自分の子どももうまくいく保証はないと述べられています。子どもの成功にはあまりにも多くの要因が影響しているからです。
個人の体験記を一般化したり,やみくもに信じて同じことをしてしまっては,かえって子供を成功から遠ざけてしまう可能性があると著者は述べています。
具体的な例を用いて説明します。読書量が多い子どもが,いつもテストで良い点数を取っていたとします。これを見て「読書すれば勉強ができるようになるんだ」と信じ,自分の子どもに読書をさせたところで,あまり成果は期待できません。子どもの理解力や本の選定方法,読書好きがどうか,他の習い事との兼ね合い等,様々な要因が関係しているためです。例えば,ある子どもは読書ではなく,ワークショップ等を通じて体験しながら学ぶ方が,学力が上がるかもしれません。
因果関係を明らかにしよう
どこかの誰かの成功体験や主観に基づく逸話ではなく,科学的根拠に基づく教育を行いましょうと本書では提案されています。そして,科学的根拠の一つとして因果関係が挙げられています。「どういう教育が成功する子どもを育てるのか」という問いに対する原因と結果です。
因果関係を考えない/因果関係がないのにあると思い込み,子供に効果的でない教育を行う親は少なくありません。先ほどの「読書をするから学力が高い」という例についても,読書と学力の間に相関性があるかは不明です。他にも,次のようなケースについて,因果関係があると思い込んでいる親が多いです。
- ゲームをするから成績が悪い
- 恋愛をしているから勉強に集中できない
- 先取り問題集に取り組んでいるから学力が高い
- 塾に通っていないから成績が悪い
- 〇〇塾・特定の習い事に通っているから成績が良い
因果関係を考えず,ゲームや恋愛を禁止する,先取り問題集に取り組ませる,有名塾に通わせるという対策をとったとしても,教育効果は期待できません。
親が良さそうだと感じた教育をやみくもに行うのではなく,「なぜ良いと感じるのか」「本当に因果関係はあるのか」「因果関係を考慮した上で,自分の子供にその教育を行うことは効果的なのか」など,一度立ち止まって考えることが大切です。そうすることで,効果的でない教育実施に伴う無駄な時間・エネルギーを減らし,本当に子供の将来のためになる教育に回すことができるのです。
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