子どもをやる気にする言葉がけ⑨~努力した部分をほめる

「まだここもできていない……」「またこんな悪いことをして!」「厳しく声かけしないと!」と子どもの悪い点,不足している点が気になり,つい叱ってばかりになってしまうお父さん,お母さんも多いと思います。しかし,叱るのと同じくらい,よい点やがんばっている点をほめることも大切です。叱る声かけとほめる声かけが,割合として半分ずつくらいになるように心がけましょう。

叱られてばかりだと,誰しもやる気が出にくいものです。「前よりここがよくなったね!」「最近,この部分はがんばってるよね!」と周りから認めてもらえると,それが励みになって,「ちゃんと見ていてくれるんだ!」「もうちょっとがんばってみよう」と,さらに努力することができます。

「うちの子は、本当に悪いところばかりなんです」「ほめるところなんてないんです」とお思いの保護者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし,その子の中で成長している点は必ずあるはずです。周りと比べるのではなく,過去の子ども自身と比べて,よくなっている点やがんばっている点をぜひほめるようにしてください

具体例をご紹介しましょう。小学一年生のAくんは文字の読み書きが苦手で,ひらがなを書くのも一苦労していました。それでもAくんはがんばって学校の宿題や作文に取り組んでいました。

しかし,Aくんのお母さんは,「汚い字ね!もうちょっと何とかならないの」「こんな字,読めないわよ。書き直しなさい!」と厳しく声かけしました。「こんなのがんばっているうちに入らないわ」「周りの子はもっと上手にすらすらと字を書けるのに……」「もっとがんばってもらわないと!」と考えていたためです。Aくんの不足している点,まだできていない点ばかりが気になり,努力している点や,前よりできるようになった点を認めることが難しかったのです。

しばらくすると,Aくんは文字を書くことを避けるようになりました。「ぼく,作文なんて大っ嫌い!」「ぜったいやらないから!」と強い口調で拒絶するようになってしまいました。

悩んだAくんのお母さんは,私のもとに相談に訪れました。私は簡単な作文プリントを用意して,何とかAくんに取り組んでもらうところから始めました。そして,できるようになった点を積極的にほめるようにしました。

「字をすらすら書けるようになったね。前回より速く書けているよ。この調子!」

「前は『嫌だ!』って言ってたのに、今日は自分からプリントに取り組んでくれたね。ありがとう!」

「今日はカタカナを使えたね。とてもいいね!」

「前より字が上手になったね!ほら,プリントを見比べてみるとよくわかるよ。この前のプリントより,今日のプリントの方が,きれいに字が書けているね。最近本当によくがんばっているからね!」

このような声かけを継続したところ,Aくんは少しずつ自信を取り戻したようでした。「今日もプリントがんばってみようかな!」「見て!今日は漢字も使ってみたんだ!」と,自ら進んで学習に取り組むようになりました。

このように,よくなった点やがんばった点をほめると,子どもの努力する姿勢を引き出すことができます。大人が期待している水準にまだ達していなくても,プロセスや姿勢を認めることが大切です。コツコツ粘り強く取り組むことができれば,たとえ時間はかかっても,一つ一つ壁を乗り越え,やがて努力が実を結ぶでしょう。

 

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