『トヨタの問題解決』から教育を考える⑥「子供を自律させる目標の決め方」

子供が物事を達成できない理由のひとつとして,大人が最初から高い水準を求めすぎていることが挙げられます。子供一人で物事を成し遂げられるようにするにはどうすればよいか,『トヨタの問題解決』((株)OJTソリューションズ/中経出版)をもとに考えていきましょう。

取り組む問題は欲張ってはいけない

トヨタの問題解決』に次のような記述があります。

取り組む問題を決めるときは,「大きな問題を解決しよう」と欲張りすぎてはいけません。[......]大きな問題テーマは,いずれ取り組まないといけないものですが,欲張ってこれらを一気に片づけようとすると,やることが多すぎて挫折することになります。

家庭教育でも小さな問題から取り組むことが大切

家庭教育に当てはめて考えていきましょう。成績アップ,志望校合格などという問題はたいていの子供にとって大きすぎます。何から手をつけて良いか分からず,あるいはやるべきことが多すぎてやる気が起こらず,挫折してしまいます。問題を子供が取り組めるレベルにまで細かく分解し,一つ一つ解決していくことが大切です。

例えば,まずは小テストで満点を目指す,一教科だけ10点上げる,次のテストでは計算ミスをしない,漢字だけは全問正解することなどです。

学習面と生活面は密接に関連しているので,生活に関する小さな問題から解決していくことも効果的です。夜更かしせずに決まった時刻に就寝する,自分一人で起床する,忘れ物をしないことなどです。

「小枝」から「幹」へと攻める

トヨタの問題解決』では次のように述べられています。

[......]大問題と中問題と小問題はつながっています。問題の構成そのものは変わりません。つまり,小さな問題から手をつけても,それを解決していけば,いずれ中問題や大問題につながっていきます。

小問題:夜更かしせずに決まった時刻に就寝する,自分一人で起床する,忘れ物をしない→中問題:小テストで満点を目指す,一教科だけ10点上げる,次のテストでは計算ミスをしない,漢字だけは全問正解する→......→......→大問題:成績アップ,志望校合格というように,小問題の解決が結局は大問題の解決につながっているのです。

事業活動を通して感じるのは,小問題へ立ち返ることに納得されないご家庭が多いということです。「周りはあんなに高度なことに取り組んでいるのに,どうしてうちの子だけ......」という心情が大きいようです。しかし,小問題・中問題を解決せずに,大問題を根本的に解決することはできません

大きすぎる問題の解決を優先させると子供は自律しない

小問題・中問題を放置して,大問題を解決しようとすると,解決策の押し付けになります。小問題・中問題を解決できない子供が,自力で大問題を解決できるはずがありません。例えば,夜更かしばかりして授業中居眠りするような子供や,計算ミスや漢字で繰り返し得点を落とすような子供が,自力で成績アップの方法を考えることは不可能に近いのです。

生活面や学習面の小さな問題を軽視して,成績アップや志望校合格という大問題の解決ばかりに目が行くと,周りが受験テクニックを教え込んだり,テストの山を張ったり,付きっきりで指導し知識を暗記させたりといった手段を子供に押し付けることになります。これでは,子供が自分で考え行動できる力は向上しません。仮に成績アップや志望校合格という大問題を解決できたとしても(この方法で解決できる可能性はかなり低いですが),子供は自律しないのです。常に周囲が解決策を与えなければ,問題を解決できないため,将来社会で活躍することはできません。

 小さな問題解決に取り組むことが子供を自律させる

大きな問題を小さな問題に分解し,一つずつ解決していくことが非常に重要です。遠回りに見えて,実は大きな問題解決への一番の近道です。小さな問題を着実に解決していくことで,子供の自信・やる気,思考力も徐々に高まり,問題解決のスピードが加速度的に速まることも多いです。

大人の目線で目標を設定して,高い水準の問題解決を要求するのではなく,取り組みやすい小さな問題から解決していくことが,子供を自律させます。

 

 

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