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『「学力」の経済学』から学ぶ教育②「子供をご褒美で釣ることの落とし穴」

今回は,「子供を勉強させるために,ご褒美で釣ってはいけないのか」という問いについて考えてみたいと思います。

「目の前ににんじん」作戦は子供をすぐ机に向かわせる

『「学力」の経済学』において,子供が勉強を先送りにする理由は,目先の満足を優先させてしまうためであると述べられています。勉強した方が自分の将来のためになることは分かっている。しかし,今,目の前にあるゲームやテレビなど,すぐに手に入る快楽を求め,勉強を先送りにしてしまう......という状態です。

「目の前ににんじん」作戦は,この状態を逆に利用して,すぐ手に入るご褒美を準備し,子供を勉強するように仕向けるというものです。「〇〇したら遊んでいいよ」「〇〇したら欲しい物を買ってあげるよ」など,目の前にご褒美をぶら下げることで,今,勉強することの利益・満足度を高めるのです。

学力を上げるご褒美のあげ方

『「学力」の経済学』では,子供の学力を上げるご褒美の与え方について考察されています。例えば,次の2つの方法について比較されています。

(1)テストでよい点を取ればご褒美をあげます

(2)本を1冊読んだらご褒美をあげます

(ここで言うご褒美とは,金銭的・物質的なものだけでなく,自由な時間・活動等も含むと解釈してください。)

(1)の場合,子供は「テストでよい点数を取るにはどうすれば分からない」という状態に陥り,なかなか具体的な方法を見出すことができません。一方,(2)の場合は,何をすればよいか明確です(「宿題が終わったら」「問題集を2ページやれば」等のご褒美のあげ方も(2)に分類されます)。

実験結果によると,(2)のご褒美のあげ方は子供たちの学力を上げる効果がありましたが,(1)は効果がなかったそうです。ただし,どうすれば成績を上げられるのかという具体的な方法を示してくれる先生・指導者がいる場合には,(1)のご褒美のあげ方でも学力改善が見られたそうです。

子供をご褒美で釣ることの落とし穴

「本を1冊読んだらご褒美をあげます」「宿題をやったらご褒美をあげます」という家庭教育は,本当に推奨できるものなのでしょうか。このような家庭教育を行う前に,考えておいた方が良いことがあります。

やることが目的化してしまうと考える力は育たない

危険なのは,子供が「本を読みさえすればよい」「宿題をこなせばよい」という思考に陥ってしまう可能性があることです。

確かに,本を読んだり宿題をしたりするので,一時的にテストの点数は上がるかもしれません。しかし,「何のために本を読むか・宿題をするか」「本・宿題から何を学ぶか」というところまで考えが及ばず,「本を読むこと・宿題をやること」自体が目的化してしまいがちです。「なぜ勉強が必要なのか」「現在の勉強方法のどこが良くないか」「どうやったらもっと成績が上がるのか」というところまで,子供自身で考える習慣が付きません。将来的には,他人から指示や課題を与えられないと何もできない大人になってしまいます。

ご褒美で釣るかどうかは目的次第

最初の問いに戻りましょう。「子供を勉強させるために,ご褒美で釣ってはいけないのか」という質問に対する答えですが,「得たい効果による」と言えます。

「本を読んだらご褒美」「宿題をやったらご褒美」という家庭教育は,勉強の習慣付け・一時的な成績アップに効果を発揮するでしょう。どうしても勉強しない小学校低学年の子供に対しては,このような対策も有効かもしれません。

しかし,小学校高学年~中学生になっても,この家庭教育を続けていると,子供自身で考え行動する力が向上しません。ご褒美で釣るという教育を通じて,「子供自身で目標を持って勉強する」「親がやることを指示しなくても自身で考えて行動する」という効果は期待できないのです。

「どうやったら成績が上がるか」「なぜ勉強しなければいけないか」を子供自身で考える力を養うことは大切ですが,目に見える形で成果が表れるまで,とても時間がかかります。「テストの点数が上がるなら,ご褒美をあげればよい」という安直な考えは捨て,根気強く取り組むべきテーマであることをお伝えしておきます。

 

 

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