以前より良くなった点,努力した点について褒めることは,子どもの「やり抜く力」を高める上でとても有効です。「自分の頑張りを見ていてくれる人がいるんだ」と子どもは安心感を抱き,「もっと頑張ろう」と前向きに物事に取り組むことができるためです。
子どもを褒める際,注意してほしいことが3つあります。
(1)他の子どもと比較しない
周囲と比較するのではなく,以前の子ども自身より成長していたら,褒めるようにしましょう。「〇〇くんはここまでできるのに……」と周囲と比べて子どもを評価すると,「自分は頑張っているのに」「頑張っても誰も見てくれないんだ」と努力しようとする気持ちが失われてしまいます。
子どもが頑張っていても,成果がすぐに表れないこともあります。子どもが努力しているのであれば,「最近頑張っているね」「前よりここが良くなったね」ときちんと評価して、「このまま続ければ結果が出ると思うよ」と励ましの声掛けを実施するようにしましょう。
(2)努力を誉める
「頭がいいのね」と才能を褒めるのではなく,「よく頑張ったね」と努力を褒めるようにしましょう。
コロンビア大学のミューラー教授らの実験結果によると,「子どものもともとの能力(=頭の良さ)を褒めると,子どもたちは意欲を失い,成績が低下する」ということです(中室牧子『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
能力を褒めると,何かできないことがあったとき,「才能がないからだ」「頭が悪いからだ」と,その原因を能力に求めてしまいます。能力を褒められた子どもは,「才能がないと思われたくない」「頭が悪いと思われたくない」と考え,できる課題にしか挑戦しなくなります。失敗や困難を乗り越え,物事をやり抜くことが難しい性格になってしまうのです。
一方で,努力を褒められた子どもは,何かできないことがあったとき,「自分の努力がまだ足りないからだ」と考え,より努力します。努力を褒められた子どもは,何回テストを重ねてその結果が悪くとも,粘り強く問題を解こうと努力を続けたというデータがあります(中室牧子『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン)。努力を褒めると,さらなる努力を引き出すことができるのです。
(3)良くなった部分を具体的に褒める
子どもを褒めるときは,良くなった部分を具体的に褒めるようにしましょう。
子どもに自信を付けさせたいからと言って,むやみやたらに褒めないよう気を付けてください。何でも褒めると,「自分は何でもできるんだ」「悪いところはないんだ」と勘違いしてしまい,現実を直視できなくなります。現状や結果を冷静に分析して,次に生かしていくことができないので,物事をやり抜くことが難しくなります。
「前よりここの部分が良くなったよね」「一時間集中して勉強できたね」と,明確な根拠を示し,具体的に褒めましょう。成果がなかなか出なくても,姿勢やプロセスを評価していることを伝えると,子どもは「見てくれている人がいるんだ」と安心して,さらに努力することができます。
子どもの努力する姿勢を引き出すことで,「やり抜く力」を高めましょう。
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