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子どもの「やり抜く力」を高める方法①~PDCAサイクルを回す
Plan(計画)
Do(実行)
Check(評価)
Act(改善)
「やり抜く力」を高めるには親子間の信頼関係が大切
子どもの「やり抜く力」を高めるためには,親子間で信頼関係を築くことが重要です。子どもが「自分は受け入れられているんだ」と安心感を抱くことで,物事をやり抜こうという気持ちが起こるためです。
マズローの欲求5段階説
理論を用いて説明しましょう。アメリカの心理学者アブラハム・マズローは,人間の欲求には5段階の階層があることを発見しました。人間の欲求は,5段階のピラミッド構造で表すことができ,低次の欲求を満たすことで初めて,もう一段階上の高次の欲求を欲するという理論です。
第一階層:「生理的欲求」
「食べたい」「寝たい」など、生きていくための本能的な欲求です。この欲求が満たされると,次の階層である「安全欲求」を求めるようになります。
第二階層:「安全欲求」
「危機を回避したい」「安全な暮らしがしたい」など,秩序的で安全な生活を求める欲求です。この欲求が満たされると,次の階層である「社会的欲求」を求めるようになります。
第三階層:「社会的欲求」
「集団に属したい」「仲間が欲しい」など、社会的な役割や人間関係に関する欲求です。他者に受け入れられている,自分が必要とされている,どこかに所属しているという感覚を求めます。この欲求が満たされると,次の階層である「尊厳欲求」を求めるようになります。
第四階層:「尊厳欲求」
「他者から認められたい」「尊敬されたい」など,自分が集団から価値ある存在だと認められ,尊重されることを求める欲求です。この欲求が満たされると,次の階層である「自己実現欲求」を求めるようになります。
第五階層:「自己実現欲求」
「自分の能力を引き出し,創造的活動がしたい」「あるべき自分になりたい」など,自分の持つ能力や可能性を最大限発揮したいという欲求です。第五階層に到達して初めて,創造性の高い活動,目標達成,自己成長などを志向するようになります。
第一~四階層の欲求は、足りないものを満たすという意味で「欠乏欲求」といわれますが,第五階層の「自己実現欲求」は,欠乏欲求との対比で「成長欲求」「存在欲求」と呼ばれます。
「やり抜く力」は第五階層の「自己実現欲求」に分類されます。したがって,「やり抜く力」を高めるためには,第一~四階層の「欠乏欲求」を満たしている必要があります。
子どもがなるべく小さいうちに,安心して生活できる家庭の場を提供しましょう。親子間で信頼関係を築き,ありのままの子どもを受け入れることが大切です。そうすることで,ようやく「やり抜く力」を高める素地が整ったことになります。
幼少期に親子の信頼関係を築くことが大切
幼少期は特に,子どもが家庭で過ごす時間が長く,親の影響を受けやすい時期です。幼少期に構築された親子の関係性は,長きに渡って継続すると同時に,子どもの他者への関わり方にも大きな影響を与えます。幼少期の親の接し方で,子どもの一生が決まると言っても過言ではありません。
具体的な事例をご紹介しましょう。中学二年生のAさんは,上手くいっていないことを親に隠したり,嘘を付いたりします。悪いテスト結果は絶対に親に見せません。「まだ答案が返却されていない」と嘘を付きます。宿題もやっていないのに「やった」と言ったり,答えを写したりします。分からない問題があっても「全部わかった」と言います。
Aさんは幼少期から,親のエゴや見栄で叱られ,ときには体罰を与えられてきました。Aさんは努力しているのに,親は認めてくれません。幼児教室に通っていましたが,難しい宿題が多く,Aさんは頑張っているのに,なかなかできませんでした。そんなときも,「なんであなたはできないの!」「お友達はみんなできているじゃない!」と怒られます。「難しいの?」「頑張っているね」とAさんの親が歩み寄ってくれることは,一度もありませんでした。
次第にAさんは,親に本音を話さなくなりました。本当のことを親に話しても,分かってくれないからです。また,「出来ないことは悪いことだ」という考えが頭の中に刷り込まれ,嘘を付いて誤魔化すようになりました。
Aさんが中学二年生のときに,Aさんと私は出会いました。そのころには,親だけでなく誰に対しても嘘を付いて誤魔化すことが,Aさんにとって当たり前になっていました。Aさんは私に対しても嘘を付きました。「毎日一ページ,プリントをやろうね」「できなくてもいいから,正直に『できなかった』と言おう」――このような約束をAさんは一つも守れませんでした。どう見ても宿題をやっていない,明らかに答えを丸写ししたときでさえも,Aさんは「できた!」と言います。嘘を付くのが習慣になってしまっているのでしょう。私とAさんは信頼関係を築くことができませんでした。Aさんは学校の先生や,他の習い事の先生,友達にも,同じように嘘を付いているようです。
Aさんのように現実を直視できない,自分にも他人にも嘘を付くようでは,「やり抜く力」を高めるのは難しいでしょう。Aさんのこのような性格は,幼少期に親子間で信頼関係が築けなかったことに起因します。
まずはありのままの子どもを受け入れよう
幼少期に親子間で信頼関係を築き,親にありのままの自分を受け入れられることで,子どもは安心感を得ます。「お母さん、お父さんには何でも話していいんだ」という気持ちを,子供に持ってもらうことが大切です。そうすることで,将来,他者と信頼関係を築きながら,「自分の好きなことを深めよう」「勉強も頑張ってみよう」と粘り強く物事に取り組めるようになるのです。
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『やり抜く力』から学ぶ家庭教育~12.将来社会で活躍するためには「才能」より「努力」が大切
人生において成功できるかどうかは,「やり抜く力」の有無に左右されると言われています。『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース著/ダイヤモンド社)を読み解きながら,「やり抜く力」について考察を深めます。
やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける
- 作者: アンジェラ・ダックワース,神崎朗子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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この問いを考えるにあたって,「才能」と「努力」に関する公式をご紹介しましょう。『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』の著者であるアンジェラ・ダックワース氏は,本書で次のような方程式を紹介しています。
〈才能 × 努力 = スキル〉→〈スキル × 努力 = 達成〉
「才能」とは,努力によってスキルが上達する速さのことで,「達成」とは,習得したスキルを活用することによって表れる成果のことです。
「途中で燃え尽きてしまう子」と「最後までやり抜ける子」の違い
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「甘くしようか,厳しくしようか……」子どものしつけでお悩みの方に知ってほしい3つのポイント
1.叱る基準・ルールが明確かどうか
2.親の感情で子どもへの接し方を変えていないか
3.親のルールを押し付けていないか
『やり抜く力』から学ぶ家庭教育~11.ご褒美作戦がうまくいかないときの対処法
人生において成功できるかどうかは,「才能」ではなく,「やり抜く力」の有無に左右されると言われています。『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース著/ダイヤモンド社)を読み解きながら,「やり抜く力」について考察を深めます。
やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける
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ご褒美をあげて良いとき・悪いとき
弟はとても頭がよい子なのに、あるときから成績が下がり始めたという。やる気を出させるために、選手は最新モデルのXboxのゲーム機を買い、ラッピングされた状態のまま弟の部屋に置いた。「成績表がオールAだったら、ラッピングを破いてもいい」という取り決めだった。最初のうち、作戦は功を奏しているように見えたが、やがて弟はスランプに陥ってしまった。「こうなったら、Xboxをあげたほうがいいんでしょうか?」[……]「ていうか、オールAなんて無理なんじゃないの?」[……]
目標が達成できなければご褒美は与えない
目標達成の方法を一緒に考える
「まず、弟にただゲームをあげるなんて絶対にいけない。[……]君の弟に必要なのは指導だ。また以前のようによい成績を取るには、具体的になにをすればいいか、よくわかるように説明してくれる人が必要なんだ。計画が必要なんだよ![……]」
- テストでどんな間違いが多かったか。どこが・なぜ出来なかったか。
- 計画,学習法など,どこに問題があったか。
- これからどのように変えていくか。
『やり抜く力』から学ぶ家庭教育~10.褒めても子どもの「やり抜く力」は引き出せない
人生において成功できるかどうかは,「才能」ではなく,「やり抜く力」の有無に左右されると言われています。『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース著/ダイヤモンド社)を読み解きながら,「やり抜く力」について考察を深めます。
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褒めても「やり抜く力」は高まらない
「叱らない子育て」「褒める教育」が一時話題となりました。子どもを褒めると,やり抜く力は高まるのでしょうか。
- 少し頑張ったら「すごいね」と褒める。
- もっと頑張ってほしいから,親の希望通りに動いてほしいから,子どもがあまり努力していないのに,「すごい!」「やれば出来るよ!」とおだてる。
- 目標を達成していないのにご褒美を与える。頑張ったのにかわいそうだ。
お子様にこのような声掛けや接し方をしていないでしょうか。著者は自身の子育てについて次のように振り返っています。
娘たちに対する自分の接し方を振り返って、私は反省した。私は学習に必要な条件をつくっていなかった。つまり、「がんばったらごほうびがもらえる」(「がんばらなければ、ごほうびはもらえない」)というルールを、子どもたちに認識させる環境をつくっていなかった。
子どもたちにとって望ましい適切なフィードバックを与えることが、私にはなかなかできなかった。娘たちがどんなことをしても、ついほめてしまった。
適切なフィードバックが「やり抜く力」を引き出す
子どもが何をしても褒めるのではなく,基準を明確にし,毅然と接しましょう。以下のような接し方を心がけることが大切です。
- 本当に頑張ったときだけ「よく頑張ったね」と褒める
- まだ足りていない点について言及する。「ここを直した方がいいね」と伝える。「どうすれば良いかな?」と子供に考えさせる。
- 頑張っていても,目標を達成できなければご褒美は与えない。「よく頑張っているね」「目標が達成できるまで,もう少し頑張ってみよう」と励ます。
物事をやり抜くためには,数々の挫折や困難を乗り越える必要があります。そのために子どもの甘えを許してはいけません。「良く頑張ってるね」と努力した点については認め,「もっとこうしてみたら?」と努力の方向性を示しましょう。挫折や困難を乗り越えることができれば,さらに高い目標に向かって努力することができます。時には厳しいことも伝え,子どもの「やり抜く力」を引き出しましょう。
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『やり抜く力』から学ぶ家庭教育~9.やり抜く力を高める子育てとは
人生において成功できるかどうかは,「才能」ではなく,「やり抜く力」の有無に左右されると言われています。『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース著/ダイヤモンド社)を読み解きながら,「やり抜く力」について考察を深めます。
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やり抜く力を高める子育て
どのような子育てが子供のやり抜く力を高めるのでしょうか。本書には「育て方診断テスト」が掲載されており,ご自身の子育てが,どのような型に属するか分かるようになっています。以下,やり抜く力を高める上で良い子育て・悪い子育てを一部ご紹介します。
【OK】
- 困ったときは,親を頼りにできる。
- 親は,私(子供)にも自分の意見を持つ権利があると信じている。
- 親は私(子供)に家族のルールに従うことを求めている。
- 親は「こうすればもっとよくできるはずだ」という方法を指摘する。
【NG】
- 私(子供)ががんばっても,親はほとんどほめてくれない。
- 親は自分たちの言うことが正しく,私(子供)は文句を言わずに従うべきだと思っている。
- 親は私(子供)が悪いことをしても叱らない。
- まちがったことをしても,親から罰を与えられることはない。
子供のやり抜く力を高めるには,「厳しい要求をしながらも,子供の自主性を尊重する」「愛情深いが毅然と育てる」「自由を与えると同時に『限度』を示す」接し方が有効です。子供の興味を第一に考えながらも,「なにをすべきか」「それくらい努力すべきか」「いつならやめてよいか」など重要なことは,完全に子供に任せるのではなく,親がアドバイスを行うようにしましょう。目標を途中で諦めさせない,サボっているときは叱るなど,必要な場面で厳正に対処することが,子供のやり抜く力を高める上で重要です。
親自身が「やり抜く力」を高める
子供は皆,親の背中を見て育ちます。世界で活躍するスポーツ選手や芸術家など,「やり抜く力」の鉄人たちも,自分がもっとも影響を受けたのは親だと語っているそうです。
[……]子どもに対して厳しくも支援を惜しまない親たちは、ほぼ例外なく、子どもたちにとって努力の手本となっており、親自身が「努力家で、なにかに挑戦するときは全力を尽くし、楽しみよりもやるべきことを優先させ、遠い目標に向かって努力する」姿を子どもに見せていた。
[……]もしあなたが自分の子供の「やり抜く力」を引き出したいなら、まず、「自分が人生の目標に対してどれくらいの情熱と粘り強さをもって取り組んでいるか」、つぎに、「子どもが自分を手本にしたくなるような育て方をしていると思うか」、考えてみよう。
子供に「勉強しなさい」「練習しなさい」と言いながら,親自身がテレビを見たり,ゲームをしたり,友達と食事に出かけたりしていませんか。「子供に対する最大の支援」とは,多くのお金をかけたり,たくさんの習い事に通わせたり,手取り足取り教えたりすることではなく,親自身が努力してお手本となる姿勢を示すことだと思います。ぜひ親自身が人生の目標を持ち,情熱と粘り強さをもってその目標に取り組みましょう。
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